2017年4月17日

ナノインプリント技術を応用した光学素子の量産を開始

光学素子の小型・薄型化と高性能化を実現し静脈認証機能搭載のタブレット端末で採用

大日本印刷株式会社(本社:東京 社長:北島義俊 資本金:1,144億円 以下:DNP)は、静脈認証機能搭載のタブレット端末などに使用できる小型光源用として、ナノインプリント*1技術を応用した微細な凹凸構造によって赤外線などの照射光を整形できる光学素子を量産する技術を開発しました。
今回量産に成功した光学素子は、小型化に対応可能という特長を活かして、富士通株式会社のスライド式静脈認証機能搭載のタブレット端末「ARROWS Tab Q507/P-SP」に採用されています。

*1 ナノインプリント : 基材上の樹脂などに金型を圧着して、nm(ナノメートル:10-9メートル)からμm(マイクロメートル:10-6メートル)単位のパターンを安定的に転写する微細加工技術

【概要】

ネットワークサービスの普及にともなうセキュリティニーズの高まりや、IoT化、自動化の進展を受け、より高度なセンシングへの需要が拡大しています。特に、波長が長く目に見えない光である赤外線を使用したセンシングは広く使われており、赤外線を特定の形やパターンで照射することで、効率や性能を高めるほか、装置を小型化したいなどのニーズがあります。
このような光を整形する技術としては回折光学素子(Diffractive Optical Element : DOE)があり、この技術の適用で、照射する光の向きや強さ、照射パターン形状を設計・調整することが可能となります。
今回DNPがナノインプリント技術で量産化した光学素子を用いることにより、今後、各種光学センシングデバイスや照明装置の性能向上、効率改善、小型化などへの展開が期待できます。

【開発の詳細】

静脈認証などに利用する赤外線の光をコントロールするには、光学素子の凹凸を深くする必要があります。また光を整形して効率を高めるためには、適宜、凹凸パターンのピッチ(幅)を狭くしたり、階段状に加工したりする必要があります。このような深くて細い形状や階段形状を作り出すのは難易度が高く、金型加工や量産における高いナノインプリント技術が必要となります。DNPは今回これらの課題を解決することで、富士通株式会社と株式会社富士通研究所が技術開発したスライド式静脈認証機能に搭載される光学素子の量産を可能にしました。
DNPはナノインプリントの基本技術を自社で開発・保有しており、金型加工~ナノインプリント~材料設計といった各工程間の製造プロセスを最適に企画・設計することができます。また、回折光学素子(DOE)の新規開発の際、顧客企業が指定する種々の光照射パターンに対応するために必要な光学設計技術も自社で保有しています。DNPはこれらのナノインプリント技術、光学設計技術の組み合わせで、要求特性に対する“合わせ込み”を最適に行うことができ、レーザー光源やLEDなどの各種光源に対応したDOEの設計・製造を可能としています。

【今後の展開が期待されるアプリケーション】

DOEは、特定の波長の光を所定の形状、分布に配光できるほか、回折パターン層が数ミクロンの厚みのため、光学素子を薄く小さくすることができます。これらの特徴により、光照射の効率化、センシングの高精度化、照射光源の小サイズ化に寄与します。これによって、以下のような用途へのDOEの展開が期待されています。
○目の虹彩認証などの生体認証
○周囲の立体物や障害物を検知する赤外線3Dセンサー
○車や家電などを操作する際の入力装置としてのジェスチャーセンサー
○周囲のシーンに応じたインフォメーションやメッセージの投影装置 ほか

【今後の展開】

DNPはナノインプリント技術の活用により、IoTや自動化に不可欠なセンシング分野での事業開発に注力していきます。
本製品及び「DNPナノインプリントソリューション」の関連商材の販売で、2021年度には年間80億円の売上を目指します。

※「DNPナノインプリントソリューション」はこちらをご覧ください。
https://www.dnp.co.jp/biz/solution/products/detail/1188730_1567.html
※記載されている商品名は、富士通株式会社の商標または登録商標です。

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