2016年5月16日
大日本印刷、図書館流通センター、日本ユニシス、ボイジャー 視覚障がい者に読書の楽しみを提供する電子図書館システムを開発 ~ 4月施行の「障害者差別解消法」に対応 ~
大日本印刷株式会社(以下:DNP)、株式会社図書館流通センター(以下:TRC)、日本ユニシス株式会社(以下:日本ユニシス)、株式会社ボイジャー(以下:ボイジャー)は共同で、視覚障がい者が電子図書館を利用する際に、音声読み上げとキーボード操作で読みたい本を探し、借り、読む(聞く)ことを独力でできるサイト・ビューワ(閲覧用ウェブブラウザ)を搭載した電子図書館システムを開発しました。2016年4月に「障害者差別解消法」が施行され、全国の公共・大学図書館で情報へのアクセスのしやすさを確保することが求められており、本システムによって、視覚障がい者が読書を自立的に楽しむことができる環境を提供します。
【開発の背景】
■視覚障がい者の読書環境
日本国内の視覚障がい者は、弱視も含めて約31万人(国民の約0.2%) *1で、高齢によって視力の低下を感じている人を合わせると、その総数は約164万人(同約1.3%)*2になります。視覚障がい者が出版物を読む(聞く)ときに多く利用する図書館ボランティア等による朗読サービスは、挿絵のイメージ紹介など文字以外の情報も伝えており、視覚障がい者にとって不可欠なものです。
■電子書籍の新たな利用方法を模索
電子書籍には、文字サイズの変更や音声による自動読み上げなどの機能が充実してきており、視覚障がい者が自立的に出版物を読む(聞く)ことができる電子図書館システムの環境整備に期待が寄せられています。人の手による録音図書や点字図書の作成には時間がかかりますが、パソコンやスマートフォン経由で電子図書館システムを活用すれば、視覚障がい者も他の利用者と同じタイミングで、自力で本を選んで読むことができます。現在、DNPとTRC及び日本ユニシスがボイジャーの協力のもと提供している「電子図書館サービス TRC-DL」*3の電子図書館システムは、ウェブアクセシビリティ規格のJIS-X8341ガイドラインに配慮し、健常者には分かりやすい画面構成となっていますが、視覚障がい者の多くが利用するパソコンやスマートフォンの画面読み上げソフトに適合していないことが課題となっていました。
■利用者の声に基づいたシステムの開発
DNP、TRC、日本ユニシス、ボイジャーは、2014年より立命館大学の研究プロジェクト「電子書籍普及に伴う読書アクセシビリティの総合的研究」(IRIS)*4と共に視覚障がい者向けのシステム開発を進めてきました。その活動のひとつとして、今回、社会福祉法人三田市社会福祉協議会(兵庫県三田市)および「公共図書館で働く視覚障害職員の会」の協力を得て、視覚障がい者が独力で読みたい本を探し、借り、読む(聞く)読書環境を実現するための要件と課題を抽出し、従来の「電子図書館サービス TRC-DL」の機能を拡張し、その要件と課題に対応した電子図書館システムを開発しました。DNPは電子図書館システム全体の企画・運営を、TRCは電子書籍の書誌データベース(TRCMARC)の制作・コンテンツの企画・システム販売を、日本ユニシスはシステム開発・保守を、ボイジャーはビューワの企画・開発をそれぞれ行っています。
【視覚障がい者に対応した電子図書館システムの概要】
視覚障がい者が健常者と同様のサービスを受けることができるシステムです。
■画面読み上げソフトに適応した電子図書館システム
パソコン版の電子図書館システムで、視覚障がい者に多く利用されている画面読み上げソフト「スクリーンリーダー」が利用できる検索画面(テキストサイト)を新たに開発しました。
従来の電子図書館サイト 今回開発した電子図書館用テキストサイト
■利便性を向上する機能を追加
読書用ビューワに視覚障がい者の利便性向上につながる下記の機能を追加しました。
1)タイトルと著者名の表示と読み上げ
2)自動音声での読み上げによる1.再生、2.停止、3.ページ送り、4.ページ戻しの機能
3)上記1.~4.の4機能のショートカットキーの設定
【今後の展開】
今後4社は、電子図書館サービスを利用する生活者や図書館からの要望を取り入れ、機能を拡充しながら、3年間で200図書館以上への導入を行い、30億円の売上を目指します。
2016年4月から三田市立図書館で本システムの検証実験をおこない、本年夏にサービスを開始する予定です。また、5月18日~20日に東京ビッグサイトで開催される第7回教育ITソリューションEXPOの図書館流通センターブースに参考出品します。
*1 : 厚生労働省「平成18年身体障害児・者実態調査」
*2 : 日本眼科医会報道用資料(平成21年)
*3: クラウド型の「電子図書館サービス TRC-DL」は、2016年4月1日現在、全国の36の公共図書館に導入されています。視覚障がい者に利用可能な電子書籍は、音声読み上げ可能なコンテンツ6000タイトル、オーディオブックが1500タイトルを超え、国内では最大規模です。(サービスの概要 https://www.trc.co.jp/solution/trcdl.html)
*4 : IRIS(Integrated Research of Accessible Ebooks: Interfaces&Services)。立命館大学が、読書に障がいを持つ人にも読みやすい電子書籍の普及を目指した研究・活動を推進するために開始した研究プロジェクトです。2011年度~2015年度までは立命館グローバル・イノベーション研究機構の研究プログラムとして、現在は人間科学研究所の研究プロジェクトとして研究を発展させています。
※DNPは「知とコミュニケーション」「食とヘルスケア」「住まいとモビリティ」「環境とエネルギー」を成長領域と位置づけ、新しい価値を創出する取り組みを進めており、その一環として教育ICT分野に力を入れています。
※TRCは、図書館総合支援業務、書誌データベース(TRC MARC)の作成・販売、図書館向け装備付図書等の販売、図書館運営業務(業務委託・指定管理者等による図書館の運営・管理)と、データベースから物流、図書館運営までワンストップで図書館総合支援を行っております。
※日本ユニシスは、学びを総合的に支援する「人財育成エコシステム」の構築を目指し、様々な教育ICT分野のサービス展開を行っています。
※ボイジャーは自社で開発したWebブラウザベースの電子書籍ビューワ「BinB」を通じて、様々な場所での読書体験を提供するため各種サービスとの連携を広げてまいります。
大日本印刷株式会社 本社:東京都新宿区 社長:北島義俊 資本金:1,144億円
株式会社図書館流通センター 本社:東京都文京区 社長:石井昭 資本金:266百万円
日本ユニシス株式会社 本社:東京都江東区 社長:平岡昭良 資本金:54億円
株式会社ボイジャー 本社:東京都渋谷区 社長: 鎌田純子資本金: 43百万円
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