2020年3月5日

ディスプレイ表面に発生するぎらつき現象の光学測定原理を解明

ぎらつき現象の定量的な比較・評価が可能に!

大日本印刷株式会社(本社:東京 社長:北島義斉 資本金:1,144億円 以下:DNP)は、光の映り込みを防ぐ「防眩フィルム」を貼ったディスプレイ表面のぎらつき現象において、今まで比較が困難だった異なる測定装置や測定条件においても、信頼性の高い客観的データの取得に必要な光学測定原理を解明しました。これにより、ぎらつき現象を定量的に比較・評価することが可能となり、「防眩フィルム」の開発効率を高めることができます。ディスプレイは高精細化によりぎらつきが増加する傾向にあり、より正確なぎらつき現象の評価が重要になっています。今後、DNPではこの知見を活用し、顧客の要望や課題を適切かつ迅速に捉え、高精細化が進む大型ディスプレイやモバイル端末、車載向けディスプレイ用に新たな防眩フィルムを提供していきます。また、電気・電子技術分野の国際規格の作成を行う国際標準化機関IEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)規格化の議論をサポートする知見になることを期待します。

【ぎらつきコントラスト測定の背景とDNPの取り組みについて】

パソコンやスマートフォンなどのディスプレイには、外光や照明などの反射による映り込みを低減するため、表面に防眩フィルムを貼るなどの対策を施しています。しかし、防眩フィルム表面の凹凸形状が、ディスプレイの画素マトリクスから出る光と作用して不規則な粒状ノイズとなり、微細な輝度分布を引き起こし、「ぎらつき」現象が発生していました。

従来、ぎらつきの度合いは、熟練者が経験や感性によって目視で判断していましたが、個人差が生じやすく、測定結果の定量化や再現性に課題がありました。そこで、防眩フィルム製品の開発や品質管理において、ぎらつき度合いを数値管理する「ぎらつき測定方法」が考案されてきましたが、同じサンプルであっても測定装置によって測定数値が異なることや、光学測定の前提となる理論体系が未成熟であったことなどにより、測定データの定量的な比較は困難で、信頼性にも課題がありました。結果的にこれまで、防眩フィルムを製造する部材メーカーのデータと、防眩フィルムを貼った最終製品メーカーのディスプレイのデータを比較できず、部材と最終製品のメーカー間のコミュニケーションが円滑に進まないといった不具合が生じていました。

また、2019年12月に制定された「ディスプレイのぎらつき度合いの求め方(JIS C1006)」では、測定データを絶対値として定量化する議論ではなく、条件が固定された測定装置での測定結果と目視による官能評価試験との相関という点に主眼が置かれています。

このような状況に対して、防眩フィルムを製造する部材メーカーであるDNPは、顧客である最終製品メーカーとの間で、測定データを介した円滑なコミュニケーションの実現と開発速度の向上を図るため、目視官能評価の数値化にとどまらず、測定結果を定量的に比較・評価できるよう、2015年よりぎらつき測定の光学測定原理についての研究を開始しました。2018年には、ぎらつき発生の基本原理を理論的に解析し、2019年には異なる測定条件間での測定データの絶対値としての定量化や互換性が得られる方法に関する指針を確立しました。

【DNPが解明した光学測定原理について】

ぎらつき測定は、防眩フィルムを貼ったディスプレイ表面をカメラで撮影して、撮影画像からぎらつきの明暗として感じられる輝度分布の標準偏差を平均値で除して行います。DNPは、カメラレンズの絞りから測定面を見込む角度でディスプレイ面上の最小解像領域の大きさが決まることを確認し、ディスプレイ面上の最小解像領域の大きさがぎらつきに反比例することを突き止めました。

その結果、撮影の際には最小解像領域が同じになるようにレンズの焦点距離や測定距離を適切に設定することにより、異なる測定条件でも撮像面上でのぎらつきが一致することを実証しました。

また、カメラレンズの撮像素子上の最小解像領域は一般的にレンズのF値(レンズの焦点距離と絞り開口径の比)のみに依存することが知られていますが、同じF値で撮像するという条件をさらに加えることで、異なる焦点距離のレンズを用いた場合でも、測定装置から出力されるぎらつきの値を一致させることに成功しました。

以上の知見を用いることにより、異なる測定装置・条件の場合でも、測定値の差異が生ずる原因解析や基準を統一したデータ比較を行うことができます。

【DNPのぎらつき防止防眩フィルムについて】

DNPは、1999年からディスプレイのぎらつきの、目視による官能評価試験を数値化する評価方法を独自に構築し、学会での報告や特許取得などを行い、その技術に基づく「ぎらつき防止防眩フィルム」を開発してきました。

DNPの「ぎらつき防止防眩フィルム」は、ディスプレイ表面のぎらつきを防ぐとともに、外光や照明などの映り込みを低減します。高精細でコントラストに優れた画像表示に優れており、2000年代初期から現在まで、さまざまなメーカーの多くの各種ディスプレイに採用されています。その寄与もありDNPは、ディスプレイ表面処理フィルムで世界No.1のシェアを獲得しています(2019年版 機能性高分子フィルムの現状と将来展望(株式会社富士キメラ総研)2018年見込より)。

【今後の展開】

ディスプレイの大画面化や、4K・8K等の高精細化によって、ぎらつき度合いは増加する傾向にあり、ぎらつきが定量的に比較・評価できることがますます重要となってきています。今後もDNPは、ぎらつき光学測定原理の研究結果を用い、より優れた「ぎらつき防止防眩フィルム」の開発を行うとともに、ぎらつきに関する最新の技術について、学会などで発表していきます。これにより、顧客企業とともに理論に基づいて議論することが可能となり、より適切なぎらつき防止のソリューションにつながると考えています。

ディスプレイのぎらつきコントラスト測定については、IECでも規格化がスタートしています。今回、今まで異なる装置で取得した測定値の相互比較が難しかった点において、IECが重視する相互運用性の道筋をつけたことに大きな意義があると考えています。今後のIEC規格化の議論をサポートする知見となることを期待します。


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