2020年3月9日
学習支援プラットフォーム「リアテンダント」の主要機能として、小学校の「評価テスト」をAIで自動集計し、ビッグデータを蓄積・分析するモデルを開発
大日本印刷株式会社(本社:東京 社長:北島義斉 資本金:1,144億円 以下:DNP)は、学習支援プラットフォーム「DNP学習クラウド リアテンダント®」において、ほぼすべての小学校で日常的に実施されている「評価テスト」の採点結果をAIで自動集計し、ビッグデータとして蓄積・分析するモデルを開発しました。
これにより、教員の業務負荷を削減するとともに、蓄積された採点データ(以下:スタディ・ログ)にもとづく児童一人ひとりに向けたカルテや復習用デジタルドリル・教材を提供することで、文部科学省(以下:文科省)の重点施策「GIGAスクール構想」が目指す「個別最適化学習」の実現を支援します。
「リアテンダント」の新機能開発の背景
「リアテンダント」は、蓄積されたスタディ・ログを分析し、その結果に基づきさまざまな教材やサービスを提供するプラットフォームサービスです。教員がこれまで活用してきた教材や、新たな学び方を提案するEdTech教材を提供する企業、塾、大手教育ICTベンダー各社とのオープンなパートナーシップを推進することで、「ICTを活用した学習」「個別最適化された学び」の実現を支援するプラットフォームとして、機能強化を進めています。
DNPは、2020年2月に政令指定都市・中核市を含む7自治体にて、小学校の「評価テスト」によるスタディ・ログの自動集計・蓄積・活用に関する実証評価を開始しました。当実証は、青葉出版、教育同人社、新学社、日本標準など、「評価テスト」を発行する主要7社*1中5社の協力のもと実施しました。実証校の教員からは、テストの集計・入力作業時間が最大で85%削減されたとの声を得ており、学校では蓄積したデータを「リアテンダント」上で分析することで、児童ごとのカルテを作成し、児童一人ひとりに対応した指導を実現しています。
DNPは、2020年1月に成立した「GIGAスクール構想」にともなう教育環境のICT化を視野に入れ、「リアテンダント」で処理したスタディ・ログを分析し、このプラットフォームから個々の児童生徒に応じた復習用デジタルドリルや教材を提供します。今回開発した分析機能の評価をさらに進め、2020年度夏以降に順次サービスを開始する予定です。
「評価テスト」の概要と採点の課題
「評価テスト」は、小学生の通知表作成の材料となる、各教科の単元・期末ごとに行われるテストです。全国の小学校の8割が、教材会社の提供する「評価テスト」を採択し、実施しています。
評価テストのイメージ
教員がクラス全員の解答用紙を採点(丸付け、総得点・観点別得点の集計、入力)するにあたり、一般的には手作業で集計した結果を一度紙に転記した後に入力作業を行うため、集計・入力作業だけでも1回のテストでおよそ20分を要します。年間でみると1教科で16回程度、4教科では約70回のテストが実施されるため、教員は2,000枚のテストを約1,400分かけて集計する計算となります。*2学期末などには深夜残業での対応となることが多いため、文科省における教員の過重労働対策のなかでも、テストの採点は大きな業務負荷の一つとして捉えられています。
また、文科省の施策として注目を集めている「個別最適化学習」の実現においても、採点の業務負荷は大きな課題となっています。個々の児童の学力特性を明らかにし、児童に応じた指導を行う「個別最適化学習」を進める上で、詳細なスタディ・ログ(設問別の正誤情報など)を基とした分析が求められます。しかし現在では、小学校における「評価テスト」の採点結果は、総得点や観点別の得点管理にとどまるのが一般的であり、詳細なスタディ・ログの集計・入力を行うには、年間2,400分以上必要という計算となります。これらの実施は多忙な教員の業務のなかでは現実的ではなく、テストの採点結果は通知表を付けるためだけのものとなっており、スタディ・ログに基づく指導まで至らないのが実状です。
今回提供するモデルの特長
- 「評価テスト」の採点結果は、教員が各教材会社の提供する集計ソフトやExcelに手作業で入力していますが、「リアテンダント」では、丸付けした解答用紙をスキャナで取り込むだけで、採点記号(〇・✓・△)と部分点をAIで自動的に認識し*3、データ化します。これにより、従来行っていた採点結果の集計・入力作業が大幅に効率化されます。
- 多くの学校では、教科ごとに異なる教材会社の「評価テスト」を活用していますが、「リアテンダント」は国内で初めて複数の教材会社のテストを共通のプラットフォームで扱えるようにしました。教材会社を問わず、「評価テスト」のスタディ・ログの蓄積・活用が可能です。
- 設問別の正誤情報といった詳細なスタディ・ログを教員の負荷なく蓄積できるとともに、個々の児童の傾向やクラス間比較などがグラフや表形式によって可視化できます。通知表作成の効率化だけでなく、従来教員が行えなかった、詳細なスタディ・ログに基づく指導が可能となります。スタディ・ログをもとに、児童ごとに優先して復習すべき問題を抽出し、タブレット対応ドリル教材や紙のドリル教材といった異なる復習教材を提供します。
本モデル活用の流れと効果
一般的な評価テストの集計結果と、詳細なスタディ・ログの比較(イメージ)
DNPグループの教育ビジネスの取組み
DNPグループは、人材の多様性を高め、新たな価値創出につなげる教育の提供を目指して、幼保から小中高校、大学、リカレント教育まで、生涯の様々な学びを支援する教育ビジネスに取組んでいます。子ども、教員、保護者が望む学習情報を、最適な時に、最適な形で提供する小中高校向けプラットフォームサービス「リアテンダント」をはじめ、大学の電子教科書配信・オリジナル教材開発支援や電子図書館、BPO(業務受託)を提供するなど、DNPグループが一体となって取り組んでいます。
*1 一般社団法人日本図書教材協会に加盟する教材会社7社の内の5社にあたります。
*2 1クラスあたりの児童数30人、1教科あたり16単元のテストを4教科行う場合の試算。なお、所要時間は実証校教員へのヒアリングにもとづきます。
*3 採点記号の自動認識機能については、株式会社TRIART保有の画像認識技術を利用して開発しました。
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