
【役員インタビュー】「共創」の進化がもたらす未来社会 ―DNPの大阪・関西万博プロジェクト
- X(旧Twitter)にポスト(別ウインドウで開く)
- メール
- URLをコピー
- 印刷
2025年4月から開催される「EXPO 2025 大阪・関西万博」でDNPは、中島さち子プロデューサーのシグネチャープロジェクト「いのちを高める」にゴールドパートナーとして協賛しています。シグネチャーパビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」をはじめとする多様なプロジェクトを通じて、展示制作の枠を越えた価値を創造していくDNPの挑戦について、この万博を担当する常務執行役員・千葉亮太に聞きました。
目次
<プロフィール>
千葉 亮太(ちば・りょうた)
大日本印刷株式会社 常務執行役員
テーマ事業「いのちを高める」への協賛とプロジェクト参画
Q.大阪・関西万博への参画の背景はどのようなものですか。
大阪・関西万博では「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマや、「–People’s Living Lab – 未来社会の実験場」というコンセプトが掲げられています。これらは、DNPのブランドステートメント「未来のあたりまえをつくる。」と通じると考えています。また、世界中から新しい“時代の種(タネ)”が集まる万博という場で、未来社会に実装できるものを提示したいという思いから参画を決定しました。この取り組みには、「国際イベントを通した共創と社会貢献」「イノベーティブな企業としてのコーポレートブランディング」「未来社会への新しい価値・新規事業の創出」そして「従業員の誇りや働きがいなどエンゲージメントの向上」という4つの意義があると考えています。
Q.大阪・関西万博でのDNPの参画内容を教えてください。
DNPは万博を象徴・代表するテーマ事業である8つの「シグネチャープロジェクト」のうち、中島さち子プロデューサーによる「いのちを高める」にゴールドパートナーとして協賛しています。
©steAm Inc. & Tetsuo Kobori Architects All Rights Reserved |
私たちは、シグネチャーパビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」に協賛企業として出資するだけでなく、展示・体験およびバーチャルパビリオン「バーチャルクラゲ館」の企画・制作を担っています。外部パートナーとの共創による化学反応も含め、参画の意義は非常に大きいと認識しています。
©KURAGE Project & Dai Nippon Printing Co., Ltd. (DNP) All Rights Reserved |
©KURAGE Project & Dai Nippon Printing Co., Ltd. (DNP) All Rights Reserved |
-
※シグネチャープロジェクト「いのちを高める」Webサイト
https://expo2025-kuragepj.com/
-
※めざすは、創造性の民主化~中島さち子さんと共創する大阪・関西万博「いのちの遊び場 クラゲ館」
https://www.dnp.co.jp/media/detail/20175271_1563.html
また、DNPは大阪・関西万博における共創の取り組み「TEAM EXPO 2025」プログラムの共創パートナーとしても参画しています。パートナーである私たちは「防災ミッションラリー」や、ネット型のフェンスに多様なデザインを施して空間をゆるやかにつなぐ「インターフェンスプロジェクト」など5つの共創チャレンジに参画。万博後を見据えて、官民共創で推進する「EXPO共創事業」に協賛し、多様なパートナーとの協働による社会課題の解決につなげていきます。
-
※立命館大学や地域住民と共創して防災を学ぶ「防災ミッションラリー」
https://team.expo2025.or.jp/ja/challenge/1110
-
※空間を仕切ることで繋げる未来のフェンス「インターフェンス」
https://team.expo2025.or.jp/ja/challenge/1284
DNPのアセットを活かしつつ、「共創」のレベルを上げる
Q.いよいよ万博が開催します。現在の心境は?
開催が待ち遠しいですね。もともと当社にあったアセットの多様さに、プロジェクトへ主体的に参加するマインドが加わったことで、DNPに新たな強みが生まれたという実感があり、ワクワクしています。万博プロジェクトを通じてDNPの「共創」のレベルは、一段も二段も上がったと自負しています。
|
Q.DNPの多様なアセットを今回の万博でどのように活かしているのですか?
さまざまな施設やイベントでの活動を連動させて捉えると、「1:来場者や関係者の安全・安心に関連する領域」「2:パビリオンの展示・施工領域」「3:各種事務局など運営支援BPO(Business Process Outsourcing)領域」「4:バーチャル展示のXR領域」、そして「5:広報・プロモーションなどの機運醸成・コミュニケーション領域」の5つの軸があります。
「1」の領域では、DNPは「AD(Accreditation Card)証」と呼ばれる関係者入場証を製造・発行しています。また、セキュリティ分野でのアセットを活用し、AD証の発行/受け渡しを担うADセンターを運営します。さらに「いのちの遊び場 クラゲ館」の展示施工過程において、来場者の安全を考慮した設備品質のマネジメントも行っており、この分野では、モノづくり企業でもある当社の研究・技術開発部門の知見が大いに役立っています。
「2」においては、スペースデザイン部門を中心に、パビリオンの高度な施工要件に対応する体制を構築しています。ルーヴル美術館やフランス国立図書館との長年にわたる共同プロジェクト等を経験したメンバーが、これまで培ったコンテンツのデジタル化や多種多様な情報連携などの知見を生かし、来場者の多彩なインタラクティブ体験の実現に取り組んでいます。
「3」では、例えば万博のロゴマークや公式キャラクターの選定の際、事務局業務の人財や仕組みづくりに当社のBPO事業のアセットを活用しています。そのほか、会場内オフィシャルストアの運営支援など、私たちが扱う業務の範囲は多岐にわたっています。
「4」に関しては、「いのちの遊び場 クラゲ館」のメタバース空間「バーチャルクラゲ館」に加え、「日本政府館」のバーチャル空間の企画・制作も担当しています。当社の3DCGやVR(Virtual Reality)等の制作の強み、XR(Extended Reality)のバーチャル空間構築の技術や、これらを活用したDXおよびマーケティング支援などの知見を生かしています。
「5」の領域では、街頭フラッグの設置などの機運醸成事業や、広報・プロモーション事業に携わっています。この分野では、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会でオフィシャルパートナーとして大会運営を支援してきた経験も大いに活かしています。
これら5つの領域でDNPのアセットを活かすことで、万博には非常に多面的に携わっています。先日も万博関係の方に「DNPの社員はいろいろなところにいるね」と言われました。DNPグループの中で、何らかの形で万博に携わっている社員を数えてみると、さまざまな部門の約800名にもなることがわかりました。
また、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会と公益社団法人 2025年日本国際博覧会大阪パビリオンにも、これまで当社から9名の社員が出向しています。それぞれの知見・経験・スキルを生かして、国や地域、企業・団体・来場者等の誘致や広報・プロモーションなど、さまざまな業務に従事しています。DNPで育った人材が少しでも万博に貢献できているとしたら、うれしい限りです。
当社はまた、障がいの有無などに関わらず、お互いの違いを尊重し、多様性を強みとして活かす「D&I(多様性と包摂)」に力を入れています。その中で、特例子会社のDNPビジネスパートナーズは、「いのちの遊び場 クラゲ館」のインクルーシブ(包摂的)な体験づくりで重要な役割を果たしています。聴覚などに障がいがある4名の社員が展示の開発に参画し、実際に展示物に触れた際にどのように感じるといったフィードバックや、車椅子利用者の体験を最適化するなど、さまざまな提案・改善を行いました。こうした多様な人財もDNPの大事なアセットです。
Q.「DNPの『共創』のレベルは一段も二段も上がった」とのことですが、どのように変わったのですか?
中島さち子氏をはじめとした社外のパートナーとの共創を通じて、より主体的な提案型のマインドへと変化しています。従来もプロジェクトをまとめる力はあったものの、そこに「自走する力」が加わることで、より一層の成長を遂げました。
例えば、「いのちの遊び場 クラゲ館」にはさまざまな企業やクリエイターなどのパートナーが300名以上関わっています。全員参加が前提の会議では活発な議論が行われ、私たちも常に意見が求められます。そこでDNPは、プロジェクトマネージャーとして全体の意見をまとめ上げていくだけではなく、自身も一人のメンバーとして「何をしたいのか」を論理立てて伝えることができなければいけません。それぞれのステークホルダーの強みを引き出す「オーケストレーション型共創」とでも言いましょうか。そうしたものを体感したことで、DNPメンバーのマインドも大きく変わったと感じています。
考えてみればこうした化学反応も、プロデューサーの中島さち子さんが掲げる「創造の民主化」を体現したものだと思います。それは非常に喜ばしいことですし、今後のDNPの組織文化にも良い影響を与えると期待しています。
万博で“未来の種”を創出し、訪れる人に刺激を与えたい
Q.万博でどのような価値を提供したいですか? また、その先の未来をどのようにイメージしていますか?
基本的な認識として万博はゴールではなく通過点であり、「その後」をどのように発展させていくかが肝心だと考えています。しかし一方では、この万博を振り返った際に、「あのプロジェクトが結果としてレガシーになったね」と言えるものを生み出さなくてはいけないとも意識しています。
その意味で現在手応えを感じているのは、未来社会における「まなび」「XR」「エネルギー」の3分野です。
「まなび」に関しては、教科書やリカレント教育(学び直し等)、採点システムなど、DNPでも多くの実績がある教育分野のノウハウを、中島さち子氏の掲げる「創造性の民主化」や「STEAM教育※」と融合させることで新たな価値を生み出せると考えています。特に「STEAM教育」は、文部科学省や経済産業省も推進しており、今後の「まなび」に必要な要素として注目しています。1人でも多くの人が享受できる仕組みや場づくりを少しでも早く実現できるよう進めていきます。
- ※STEAM教育:創造性や問題解決能力を育むことを目的とし、科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・数学(Mathematics)に芸術・教養(Arts)を加えた総合的な教育
「XR」に関しては、「バーチャルクラゲ館」や「バーチャル日本政府館」の構築・運用で得られる知見やネットワークが大きな財産になります。すでにDNPは「バーチャル役所」や「教育メタバース」といったサービスを提供していますので、今後も既成概念にとらわれることなく新たな市場を開拓していきます。
「エネルギー」に関しては、現代社会の大きな課題の解決に“DNPとして貢献したい”という思いが起点となっています。印刷プロセスから発展させた自社のアセットを見つめ直し、掛け合わせることで、これまでにないアプローチができることも見えてきました。少しだけお伝えすると、DNPや共創パートナーの皆様の技術・アセットを掛け合わせることで、身近なエネルギーに対して電力の変換・蓄電・送電・制御等を行い、人々の暮らしの中に実装させていく。それによって将来、地球環境に負荷をかけることなくエネルギーが循環する社会を実現できないか、という視点です。その全体像の一端を、万博会期中の9月23日~10月13日に「フューチャーライフエクスペリエンス」で展示する予定ですので、ぜひご覧いただきたいと思います。
|
Q.リアル&バーチャルの万博会場を訪れる人、DNPの取り組みに興味を持っている人へ、メッセージをお願いします。
私の一番の願いは、できるだけ多くの人に万博を訪れていただきたいということです。リアル会場に足を運んでいただくことに加えて、バーチャル空間でも楽しんでいただけます。
ここまで、関係者としての“内側”から見てきた私が自信を持って言えるのは、万博は世界中から次世代のコンセプトや最新のテクノロジー、多様な視点・文化が集まった稀有なイベントであるということ。DNPが関わる展示・企画はもちろん、その他も余すことなくご覧いただき、私たちが感じているワクワク感や未来の可能性を多くの皆様に体感していただけたら、これほどうれしいことはありません。
同時に、皆様にはそこで、自分なりに未来について考えてみていただければと思います。情報メディアやSNS等で見聞きするだけでなく実際に体感することで、ご自身の中に“未来の種”のようなものが生まれると思います。その“種”を受け取る人が1人でも増え、企業や地域を越えて共創することで、次の未来はきっと明るいものになる。そんな予感を胸に、今回の万博を楽しみにしています。
- ※記載された情報は公開日現在のものです。
- X(旧Twitter)にポスト(別ウインドウで開く)
- Linkdin
- メール
- URLをコピー
- 印刷