BPOサービスのトレンドは「柔軟なリソース対応」と「データの戦略的活用」

労働力不足や働き方改革の推進などにより、企業は活動の根幹となるコア業務への集中を求められています。それによって、さらに注目されるBPO(Business Process Outsourcing)の現在地、そしてその最新の活用方法について、DNPグループでBPO事業を手がけるDNPコアライズの土屋勝史が解説します。

目次

株式会社DNPコアライズ
マネジメント本部 本部長/常務執行役員
土屋勝史

ニーズが高まるBPO関連市場

BPOとは、業務プロセスの一部を外部企業に一括して委託すること。近年、この関連市場は約3%の増加基調にあり、この傾向は今後も続くと見られています。

背景にあるのが、企業の労働力不足や働き方改革の推進です。これにともない、企業はコア業務のさらなる強化を図るため人的・物的リソースの集中を図っており、その実現を支える意味でBPOの活用が欠かせない選択肢となっています。

BPOで扱う業務は多岐にわたりますが、大別すると、審査、データ化などを行う「バックオフィス業務」、コールセンターなどの「顧客対応業務」、「営業支援業務」などがあります。また、近年加速するDXを推進するうえで、そこで求められるAIやRPA(Robotic Process Automation)などのデジタル技術、初期投資や維持コストが高額なインフラや人材、データの収集・分析や高度なセキュリティのノウハウを保有するBPO事業者の価値がさらに高まっています。

例えば、バックオフィス業務を外部に委託するパターンでは、必要な書類の送付・受付・記入情報のデータ化などを一括して行うほか、内容に不備がある場合は対象者に問い合わせる必要があるため、コンタクト業務までトータルに対応するケースも多いです。

DNPコアライズの土屋勝史は、「企業のコア業務ではない“ノンコア業務”のうち、人が担うものこそ、BPOの効果が出やすい領域です。特にこうした業務は『作業量が流動的』『特定の時期だけ発生する』など繁閑の振れ幅が大きいため、内製で対応したり、派遣社員を手配したりするケースが一般的でした。しかし近年は、一部のBPO事業者が、柔軟なリソース配分が可能な体制や、顧客の環境で運用するオンサイト型のサービスを構築したことで、以前とは状況が変わっています」と語ります。

本来、バックオフィスやコンタクトの業務はコスト部門とされ、効率的な運用が求められます。しかし見方を変えると、お客様との直接的な接点であり、生活者のデータが多く集まる貴重な業務です。この点にいち早く気づいた企業は、これらの業務を戦略部門と捉え、そこで得られる情報を顧客ニーズの把握や想定顧客像であるペルソナの見直し、キャンペーン設計の最適化の指標とするなど、BPOをマーケティングや経営の要となるデータプラットフォームとして活用し始めています。

「オールDNP」の知見を統合・深化したDNPコアライズ

DNPとBPOの関わりは、紙に印刷するという仕事をスタートした約1世紀半前の創業の頃にまで遡ることができます。印刷するには、お客様の大切な情報を預かり、適正に管理することが前提であり、情報の取り扱いやセキュリティのノウハウは当時から事業の根幹を支える生命線とも言えました。

その後、転機となったのは1980年代、電話料金の請求書やクレジットカードの利用明細といった「企業の顧客ごとにカスタマイズした情報」を印刷・配送する通知業務の増加です。業務の専門性が増したため外部委託する企業が増加したことでBPO事業が拡大し、通知した顧客からの返信をともなう案件では、DNPでの書類の受付・審査機能や問い合わせに対応するコンタクトセンター機能なども実装。のちのマイナンバー収集関連業務にもつながる、高セキュリティでBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)にも対応した環境を構築していきました。

DNPグループのBPO関連のサービス一覧

広範な業務領域をカバーする多彩なサービスを提供。DNPグループの拠点を活用した「オフサイト型」に加え、クライアントの拠点で業務を実施する「オンサイト型」、両者を融合したハイブリッド運用も可能。

こうした歩みを背景に、意思決定の迅速化と知見の統合・深化をめざして2023年に設立したのがDNPコアライズです。同社の特長について土屋は、「DNPが長年モノづくりで培ってきた、現場に立脚した提案力や設計力、開発力、運用フェーズのノウハウがある点です」と語ります。グループ全体の多様な強みを掛け合わせる「オールDNP」で、多様な価値を開発・提供しています。

例えば、書類送付や受付などのバックオフィス業務を企業が内製で行う場合、1人の担当者が封筒を開封して中身を確認し、必要に応じて顧客に問い合わせして、データ入力するまでの作業を行うケースが多くなりますが、大量に処理をする場合は同じレベルのスキルを持つ人を複数揃える必要があります。しかし、そもそも人を集めることが大変なうえ、属人的なスキルにばらつきがあると、大量に処理しきれない、内容審査の基準を守り切れない等のリスクもあります。

こうしたリスクに対してDNPコアライズは、これまで培ってきた製造業としてモノづくりの知見を活用し、各工程の業務を切り分けて1人の作業内容を極小化したり、工程を分割してシステム化したりすることで、大量のデータを迅速かつ正確に処理します。新しく審査体制を構築する際も、スタッフの育成時間が短期間で済むため、迅速に業務を立ち上げることができます。

DNPコアライズのオフサイト型BPOを支える拠点の一つ、神谷ソリューションセンター。同様の拠点を国内外18か所に分散配置することで、作業人員や工程の分散化とBCPを実現している。

また、単なる業務代行にとどまらない課題解決型のアプローチ、いわゆるBPR(Business Process Re-engineering)の対応ができるのもDNPコアライズの強みです。コミュニケーション基盤強化、業務プロセスの見直し、老朽化システムの刷新などの経営課題に対して、既存業務の延長線上ではなく、抜本的な業務の見直しとして、BPRを通じた業務最適化の実現を支援します。

「現場起点で発想し、実行する当社の強みは、“あるべき姿(To-Be)”のデザインが求められるBPRサービスにおいてこそ、その真価を発揮すると思います。実際、行政サービスの効率化をめざす自治体様とBPRの協定を結ぶケースも増えているなど、業界・業種を問わないニーズの高まりを感じています」(土屋)

専門領域への特化とサービス基盤の強化で、すべての企業のパートナーに

DNPコアライズの今後の展開について土屋は、「BPOサービスの枠を越え、お客様のビジネス変革と価値創造のさらなる支援をめざします」と話します。

具体的な展開の一つに、専門領域への対応があります。例えば近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)関連情報の開示や分析・報告業務が企業に求められています。その際、国際的な法やルールに準拠しながら広範なデータを収集・分析しなければならず、その業務負荷が各社で課題となっています。そこでDNPコアライズは、DNPグループのサステナビリティ関連部門と連携し、温室効果ガス排出量の算定やサプライチェーン全体での環境負荷の可視化などを効率的に代行する仕組みの構築に取り組んでいます。

一方、汎用的なサービス基盤の強化も進めています。単にBPO関連のノウハウの集約や情報コミュニケーション部門全体の枠に囚われず、柔軟な発想・対応による「オールDNP」の知見を集約し、DNPグループのあらゆる顧客企業に向けて、各業界別・機能別にも展開可能な汎用的なサービスを検討しています。こうした強みの融合から導き出される“これからの時代に求められる企業支援の形”を模索し、価値創造につながるサービスとして提供していくことがDNPコアライズの使命とも言えます。

土屋勝史

最後に土屋は、次のように語ります。
「BPOサービスの専門集団として生まれたDNPコアライズですが、実はあえて『BPO』というキーワードを社名に入れませんでした。代わりに掲げた『コアライズ』とは、『ともに』を意味する<Co(コ)>、DNPグループのブランドステートメント『未来のあたりまえをつくる。』に由来する<REALIZE(リアライズ)>、その中心となって実行することを表す<CORE(コア)>を組み合わせた造語です。そこには、お客様の課題に応えるだけでなく課題の本質を追究することで、企業の価値創造をより早く、より大きく実現したいという思いを込めました。皆さんとともに進むパートナーとして、これからのDNPコアライズにぜひご期待ください」

DNPコアライズ:https://www.dnp-coarise.co.jp/

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