2024年6月11日

創薬開発の支援に向けて心筋細胞の培養に関して韓国NEXEL社と技術提携

新薬開発用の評価で利用される「生体模倣システム」の開発を目指す

大日本印刷株式会社(本社:東京 代表取締役社長:北島義斉 以下:DNP)は、iPSC(人工多能性幹細胞)専門の韓国のバイオ企業であるNEXEL Co., Ltd.(本社:韓国ソウル特別市、代表取締役CEO:ハン・チュンソン)と、ヒトiPS細胞由来の心筋細胞の培養に関して技術提携をします。

DNPは2005 年に東京医科歯科大学に再生医療に関する寄付講座を開設するなど、長年、効率的な細胞培養に関する研究開発に取り組んでいます。NEXELは2012年に創業以来、韓国の高麗大学とiPS細胞の培養や分化技術の研究開発に取り組み、特にiPS細胞由来の心筋細胞には強みを持っています。

今回の技術提携により、DNPとNEXELの強みを掛け合わせ、新薬の研究開発に使用される細胞の大量製造法の確立と販売、ヒトの臓器(単数、もしくは複数の臓器の細胞)がチップ上に模擬的に再現した生体模倣システム(Microphysiological System:MPS)*1の開発を目指します。 

【DNPとNEXELの技術提携について】

新薬の研究開発では、薬の有効性・安全性の検証のために動物実験が行われていますが、その検証データからはヒトへの毒性等の予測が困難な場合があり、ヒト由来の細胞を使った検証が望まれています。近年は動物実験の禁止・削減を求めるアニマルウェルフェアの機運が高まり、動物実験を代替する技術や手法に対するニーズが広がっています。

こうした課題やニーズに対し、ヒトのES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)から培養したさまざまな臓器の細胞が新薬の研究開発で使用されています。しかし、使用する細胞の性能を均一な品質で、大量に製造することは難しく、細胞単体では必ずしもヒトの性能を十分に再現できるわけではありません。ヒトのES細胞やiPS細胞から培養したさまざまな臓器の細胞と、それらをつなぐマイクロ流路を組み合わせた臓器チップ(Organ-on-a-chip)を使用することで、ヒトの体内を再現できるMPSに注目が集まっており、今後の需要拡大が見込まれています。

DNPは、国立成育医療研究センターとともに、ヒトのES細胞またはiPS細胞からミニチュア臓器の「ミニ腸」を試験管内で生成することに、2017年に世界で初めて成功し*2、現在は試験販売を行っています*3。NEXELは、iPS細胞から心臓・肝臓・神経等の細胞への分化に関する技術を保有し、製薬会社向けに心筋細胞・肝細胞・神経細胞を製造・販売しているほか、肺等の細胞への分化技術の開発にも取り組んでいます。

今回、DNPはNEXELとの技術提携により、新薬の研究開発に使用する高品質な細胞の大量製造法やMPSを開発することで、医療・医薬分野での新しい価値の創出に取り組んでいきます。


【今後の展開】

DNPは、新薬の研究開発に使用する細胞の製造販売及びMPSの開発に向けて、NEXELとの技術提携を通じた研究・開発を強化・推進していきます。


*1 生体模倣システム → シリコンやガラス、有機材料などの基板上に、微細加工技術を用いてミクロンレベルの機械要素部品や各種の電子部品を集積するMEMS技術(Micro Electro Mechanical Systems)を活用して、微小空間に複数の生体を模倣した細胞成育環境を構築している培養ユニット

*2 創薬支援に向けて「ミニ腸」を使った共同研究 → https://www.dnp.co.jp/news/detail/1187753_1587.html

*3 「ミニ腸」の試験販売 → https://www.dnp.co.jp/news/detail/10161901_1587.html

※ニュースリリースに記載された内容などは発表日現在のものです。今後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。


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