【DNPの新しい働き方】副業は恐竜コンサルタント 社外の経験を本業に還元し、唯一無二のスペシャリストをめざす
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「第三の創業」を掲げるDNPは今、生活者視点に立ったイノベーションの創出をめざし、社員一人ひとりが新しいアイデアを生み出し、スキルや強みを向上し続けられるように柔軟な働き方を採り入れています。そうした仕組みの一つとして2019年にスタートした「副業・兼業制度」は、これまでに70名以上の社員が活用しています。本業とのバランスが取りにくいと思われがちな副業・兼業ですが、“外”の視点を獲得することで本業でも大きなメリットを得ることができます。今回、DNPで営業職を務めながら、副業で恐竜コンサルタントとして働く宮澤悠大の「新しい働き方」を紹介します。
目次
宮澤 悠大(みやざわ・ゆうた)
大日本印刷株式会社
情報イノベーション事業部
第2CXセンター
ゼロから始めたセルフブランディング
——宮澤さんはDNPで営業として働く一方、恐竜コンサルタントとしても活躍しています。副業ではどんな仕事をしているのですか?
入社以来14年間、営業としてお客様にマーケティング企画などを提案する仕事に携わっています。副業で恐竜コンサルタントの仕事を始めたのは、2019年にDNPで副業・兼業制度ができてすぐの頃でした。
副業では2・3歳から小学生くらいの子どもに向けた恐竜イベントの企画〜開催や、恐竜のイラストを描く仕事をしています。イベントでは恐竜の種類や生態を紹介するほか、自作した化石採掘キットを使ってアンモナイトの化石を掘るワークショップなどを行っています。
本業に支障が出ない範囲という制度上のルールもあるため、イベントは夕方や土日に開催することが多いです。どうしても準備が大変なときだけ、有給休暇を取ることもあります。
——恐竜が好きになったきっかけと、なぜDNPに入社したのかを教えてください。
3歳のときにワシントンのスミソニアン博物館でティラノサウルスの全身骨格を見て以来、恐竜が大好きになってしまって。子どもの頃は恐竜学者になることを夢見ていました。
10代の頃、職業として恐竜学者になる道を模索したのですが、はっきりとした道筋はなく、気づけば大学受験が目の前に。せめて恐竜に近そうなものをと考えて、大学では世界史を専攻しましたが、就職活動を始める頃には「趣味と仕事は別にすべきでは」という考えに変わっていました。DNPの採用試験を受けたのも恐竜とは関係のない理由からでしたが、選考過程でDNPグループが美術館・博物館や展示会に関連する仕事もしていることを知り、「DNPならもしかしたら、博物館などに向けて恐竜の仕事ができるかもしれない」と感じました。
入社直後に、先輩から「DNPで何がしたいの?」と聞かれ、「恐竜の仕事がしたいです!」と即答しました。すでにこの頃、“やはり恐竜への夢は捨てられない”と感じ始めていた気がします。
その後、先輩に着いて業務に邁進するかたわら、「恐竜が好き」「恐竜の仕事がしたい」ということを常に周囲に言い続けるようにしました。恐竜の案件があったら真っ先に声をかけてもらうため、「宮澤=恐竜のスペシャリスト」として認知されることが必要だと考えたからです。持ち物や服装に恐竜のモチーフを採り入れるなど、自分なりの「セルフブランディング」をしていきました。
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——実際に恐竜の仕事にはつながりましたか?
2017年に北海道むかわ町で、恐竜を活用した町おこし支援業務の提案に参加させてもらいました。これがDNP内で初めて関わった恐竜の仕事です。
むかわ町は日本で初めて恐竜の全身骨格が見つかった場所です。町おこしの企画提案に向けて社内で恐竜に詳しい人を探していたDNPの札幌事業所の担当者から、相談を受けたのがきっかけでした。この時は、町内に立てる恐竜の看板のデザインや資料の作成などを担当しました。私はそれまで、社内外の企画の専門組織に企画立案を依頼することが多かったので、自分自身で考えるという経験は初めてでした。恐竜というテーマに関われたことも嬉しかったのですが、さらに「考える楽しさ」に気付くことができました。
2019年には、上野の国立科学博物館で開催された「恐竜博2019」で、展示室の一部の企画演出を担当するチャンスを掴みました。ミュージアム関係の仕事をしているDNPグループの社員が、「恐竜の仕事をしたがっている社員がいる」と先方に伝えてくれたのです。
——セルフブランディングを続けてきた甲斐がありましたね。
そうなんです。実は入社2年目くらいに、恐竜と関わるチャンスを逃して後悔したことがあったので、喜びも格別でした。
逃したチャンスというのは、DNPが東京・銀座で運営しているグラフィックデザインの専門ギャラリー「ggg」で展示企画の社内公募があり、「恐竜の展示に役立つかも」と手を挙げたかったのですが、学芸員資格の保有が必須条件だったため、諦めざるを得なかったのです。その時、「やりたい仕事に携われるチャンスはいつ来るかわからない。もしその時が来たら絶対に逃さないように、できる準備はすべてしておこう」と強く思いました。
そして、大学の通信教育で学芸員の資格を取得したのです。1週間の実習もあったのですが、「いつか恐竜の仕事をするために資格が必要なんです」と上司に伝えたところ理解を得られ、休暇を取得して無事に参加できました。
また、福井県が主催していた「恐竜検定」の1級も取得しました。この検定は諸事情によって2年間しか実施されなかったため、1級保持者は9人だけ。「その1人がDNPにいるらしいぞ」と、予想以上に箔が付きました(笑)。
2019年にできた「副業・兼業制度」にすぐ申請したのも、その時点で具体的な案件があったわけではありませんが、申請しておけば、恐竜の仕事が来た時の役に立つだろうと思ったからです。
相乗効果で、自分の間口や深さが広がる
——副業の経験が本業に活きていることはありますか?
普段の本業では企業がお客様で、その先にいる生活者との直接的なコミュニケーションは少ないのですが、恐竜コンサルタントの仕事では子どもや親御さんと直接触れ合うことができます。どのように紹介すると子どもたちが興味を持ってくれるのか、イベントにどんな期待をしてくれているかなどをダイレクトに感じられ、本業にも欠かせない生活者視点を育む貴重な経験になっています。
例えば、子どもは化石よりも生きていた頃の姿に興味を持ちやすいんです。でも、博物館には骨格標本しかない。それであれば、DNPのAR(拡張現実)技術を使ってリアルな恐竜を再現したら喜んでもらえるのではないかと考えました。
先ほどの「恐竜博2019」の際も、学術的に正しく恐竜を紹介することと、来場した人々が楽しめることを両立させる演出を心がけました。恐竜をわかりやすく紹介するために、プロジェクションマッピングを活用する展示を企画して実現しました。
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——副業の経験は、恐竜以外の業務にも役立っていますか?
そうですね。例えば、2021年にリリースしたサントリーのオンライン工場体験コンテンツ「冒険型ビール工場体験“BEER iLAND”」では、副業でリアルとバーチャル両方の恐竜イベントを実施してきた経験が役立ちました。
この企画は、コロナ禍でリアルな工場見学を実施できなくなったため、オンラインで顧客接点をつくる企画を提案してほしいという得意先の依頼でスタートしました。まず感じたのは、「例えば360度カメラで撮る工場の動画を公開する」だけでは、生活者の予想を超える体験は提供できないだろうなということ。リアルの代替物ではなく、バーチャルならではの表現をすることでリアルとの相乗効果が生まれ、生活者の心に響くコンテンツになるので、その方向でイメージをふくらませるところから始めました。
そうして生まれたのが、オンライン上にバーチャルのビール工場を作り、キャラクターを通してビール造りを体験できるコンテンツです。体験を終えた人には抽選でビールの試飲セットを提供し、リアルな体験にもつなげる仕組みをつくりました。
——副業を通して日頃から「どうしたらユーザーに喜んでもらえるか」を考えていたことが、斬新な企画につながったんですね。
本業から副業へという“逆”の作用もあります。本業では最近、業務の視野とスキルを広げるために広報やブランディング、スペースデザインの仕事にも挑戦しているのですが、これらは恐竜関連の活動に活かせる部分もある気がしています。
そうした意味では、自分の中で「本業」と「副業」の境界がなくなり、重なってきている感覚があります。それぞれの領域で得た知見によって自分という入れ物の間口や深さが広がり、次の新しいアウトプットにつながるイメージです。恐竜という自分なりの軸を趣味レベルに抑え込んでいたら、こうした感覚は得られなかった気がします。
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夢は“恐竜学者”になること
——今後はどんな仕事をしていきたいですか?
まずプライベートの夢は、いつか恐竜学者になることです。一度は諦めた夢ですが、あらためて学術的に勉強して挑戦してみたい。私の場合、DNPの仕事で関わってきたマーケティングやブランディングの経験があるので、学問分野の方とは異なるアプローチで恐竜の魅力を伝えていけると思っています。実現するのがいつかはわかりませんが、今までにない新しいタイプの恐竜学者になれると思います。
もうひとつ、DNPの社員として実現させたいのは、DNPが運営する恐竜博物館をつくって館長になることです。会社として取り組むためには、「なぜDNPがやる必要があるのか」「DNPにどんなメリットがあるのか」を考えていかなければなりません。日々の業務を通して実績を重ね、生活者にとっても会社にとっても価値のある恐竜コンテンツを提供していきたいと思います。
——本業でも恐竜が発想やモティベーションの起点になっているのが、面白いですね。最後に、副業という働き方についてアドバイスはありますか。
副業の魅力は、“もう1人の自分”に出会えること。その“もう1人の自分”は、今の自分に思わぬ気づきを与えてくれたり、励ましをくれたりするかけがえのないパートナーです。副業で取り組みたい自分なりのテーマがある人はもちろん、キャリアに悩んでいる人にとっても、副業を通して自分を俯瞰することで新しい発見があるはずです。また、自分自身が強い想いを持って発信していったことで、周囲が応援してくれました。会社が働き方の多様性を受け入れてくれたことも、今の自分につながっています。もしあなたの会社に副業を支援してくれる制度があるなら、ぜひ一歩踏み出してみてください。きっと、自分の新しい可能性に気づくと思います。
【宮澤さんに「働き方のマイルール」を訊いてみました! 動画52秒】
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