独自調査で市場を分析 プチギフト選びはネットよりお店で?? ―女性の購買行動からお店づくりを探る-
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「生活者」「メーカー」「流通」の三者が交差する“「売り場」のプロ”として、調査〜検証〜コンサルティングを手がけるDNPのフィールドマーケティングチーム。その独自の視点によるオリジナルなマーケティング分析レポートをお届けしていきます。 その第1回として、『プチギフト選びはネットよりお店で??』をお送りします。女性たちは、ちょっとしたギフトを選ぶ際、どんなところに気を配っているのでしょうか? 女性たちの購買行動から、より効果的な売場づくりのマーケティングポイントを探ります。
目次
- Chapter1 プチギフトの買い物は、リアルなお店で!
- Chapter2 久々に会う友人へ、プチギフトは食事会の会話のひとネタに
- Chapter3 プチギフト選び、お店で後押ししてほしいんです!
- Chapter4 ラッピング、お店の腕の見せ所です!
Chapter1 プチギフトの買い物は、リアルなお店で!
こんにちは。フィールドマーケティングチーム、アラサーマーケターのA子です。
2020年も明け、正月ボケが抜けきらない間に1カ月がたちました。年末は忙しかったなぁ……。学生時代の友人とのクリスマス会という名の女子会、仕事関係の忘年会、元同僚たちで集まる年末恒例の飲み会、家族・親戚の集まりなど……12月って人と集まる機会が多いですよね。そこでよくもらったのがプチギフト。食事会の終わりがけに「今年もありがとね」と、誰かが取り出すと「わたしも!」と、みんなで交換会に。インスタで人気のハンドクリーム、日本初上陸のお店の焼き菓子……。どれもセンスが良いものばかりで、わざわざ考えて選んでくれたんだな~と思うと嬉しくなっちゃいました。その時ふと ―みんなどうやって素敵なプチギフトを見つけて、買っているんだろう?― と思ったのです。
以前わたしのチームで行った「日常生活とギフトの実施状況に関する調査 ※1」(全国の16~79歳の男女、2,600名が回答)でみると、数百円から、高くても数千円程度で、「母の日」などのシーズンギフトや人生の節目に贈るイベントギフトではなく、日常生活の中で贈るカジュアルな、いわゆる「プチギフト」を贈る人の割合は、全体の18.5%。女性だけでみると27.1%と、3割近い人が贈っています。また女性のプチギフトの購入チャネルをみてみると、スーパーマーケットが34.4%、百貨店が32.4%、専門小売店が27.0%と、リアルなお店での購入が上位を占め(複数回答可)、ネットショッピングでの購入は8.5%にとどまっています。ネットショッピングを利用する世帯が43.1%と半数近い日本で(※2)、なぜプチギフトはリアルなお店で購入されているのか? 店頭マーケティングを専門としているわたしとしては、目が離せない事態! そして、店頭でもっとギフトを買ってもらえるようにするには、どうしたらいいのか? 「プチギフトがさらに売れる店頭づくり」のマーケティングポイントを探っていきます。
【ギフト市場規模に関する調査】
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- ※1:DNP「日常生活とギフトの実施状況に関する調査」(2018年2月調査)。購入チャネルの数字は、複数回答で、回答者を100とした場合のもの。
- ※2:総務省「家計消費状況調査」(2019年11月調査)。
Chapter2 久々に会う友人へ、プチギフトは食事会の会話のひとネタに
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女性モニター12名に、総合スーパー(GMS:General merchandise store)、百貨店、専門小売店でプチギフトを買ってきてもらい、店頭での購入決定プロセスやその商品を選んだ理由などを、1対1で深く聞く「デプスインタビュー」(※3)で確認しました。プチギフトとして想定している予算も聞いたところ、どの年代でも1人あたり2,000円前後とのこと。「相手にお返しの心配をさせない価格帯」という理由には納得。収入やライフステージに関係なく、値段の感覚が同じであることは、店頭づくりのポイントのひとつになりそうです。
- ※3:デプスインタビュー:インタビュアーと対象者が1対1の面接形式で1つのテーマについて深堀しながら話を聴いていく定性調査の手法の1つ。
【DNP「プチギフト店頭購買行動調査」 調査概要】
対象者 | 20代・30代・40代・50代女性:3名ずつ計12名 |
店舗 | 都内の総合スーパー(※)、百貨店、専門小売店 |
設定 | ・家族または仲の良い友人・同僚で集まる機会があり、ちょっとした 手土産程度にプチギフトを買いに行く。 ・各自設定したシチュエーションをイメージして買い物をする。 ・2~3名に渡すプチギフトとして、普段の予算感で1点購入する (上限は1点2,000円※) |
手法 | 店舗購買、デプスインタビュー |
実施日 | 2019年12月20日(金)、23日(月)、24日(火) |
- ※「総合スーパー」でもプチギフトの購買行動があることを踏まえ、調査チャネルとして採用しています。
- ※日常的な「プチギフト」1つ当たりの平均金額は、1,700円(DNP「日常生活とギフトの実施状況に関する調査」2017年2月実施より)であることから、上限を1点2,000円に設定。
【女性モニターがプチギフトを贈る相手と商品:調査結果1】
GMS | 百貨店 | 専門小売店 | ||||||||||
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年代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 |
プチギフトを贈る相手 | 幼馴染の友人 | 学生時代の友人 | 元同僚 | 学生時代の友人 | 大学の友人 | 元同僚 | 元同僚 | ママ友 | 会社の先輩 | 学生時代の友人 | 妹 | 学生時代の友人 |
ギフト商品 | ハンカチ | ハンドクリーム | ボディオイル | オーガニックゴジベリー | アイシャドウ | 焼き菓子 | ハンカチ | 焼き菓子 | ポータブル加湿器 | ブランケット | ヘアターバン | フラワーリース |
- ※DNP「プチギフト店頭購買行動調査」より。
- ※百貨店では食料品以外の両方を調査するために、20代、40代は「デパ地下以外」、30代、50代は「デパ地下」を指定。
女性モニターがプチギフトを誰に贈るかを見てみると(調査結果1)、30代以上は「元同僚」「学生時代の友人」など、日頃顔を合わせていない、久々に会う相手に贈る傾向がありました。また「飲食店で食事をする際に手渡しする」「みんながいる前で中身を見る」という人がほとんどで、プチギフトは“大勢の人に見られるギフト“となっているようです。
選んだギフトの傾向を見てみると、百貨店では憧れのコスメブランドのアイシャドウや自分では高くて買わない高級ブランドのハンカチなど“ちょっといいもの”を購入。専門小売店やGMSでは、会社のデスクでも保湿できるポータブル加湿器や、日本初上陸のブルターニュのブランドのハンドクリームなど、体と心をケアする“癒し系”の商品が購入されています。
2,000円以内でも高級感を得られる商品や、誰もがほしいと思っていても生活必需品ではないため購入が後回しになる健康・ヘルスケアの商品は、プチギフトに向いています。プチギフトは身近な相手に贈るからこそ、「生活の中でちゃんと使ってもらえるもの」が良い、という視点で選ばれているんですね。
Chapter3 プチギフト選び、お店で後押ししてほしいんです!
店頭でプチギフトを探したり購入したりする理由として、「人にあげるものなので、直接見たり、試したりしたいから」ということを多くの人が挙げていました。そこで、どんな店頭にしたら、よりプチギフトの購入を促進できるのか? お客様に売場で商品が魅力的に映るように、視覚的に情報を発信する「ビジュアル・マーチャンダイジング(VMD)」の視点で、プチギフト売場を検証してみましょう。
【生活者の購買行動と店頭ツールの役割:購買行動の3ステップ】
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【女性モニターによる売り場評価:調査結果2】
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- ※DNP「プチギフト店頭購買行動調査」より。
購買行動の3つのステップごとに、モニターが参考にした店頭ツ―ルをまとめました(調査結果2)。百貨店の食品売り場では、ブランドカラーで統一された洋菓子店のサイネージ(看板)やカラフルなマカロン、おしゃれな包装材など、見た目に“映える”ものが足を止めるきっかけになっています。手渡す際にも“大勢の人に見られるギフト”として、見た目のインパクトが求められるプチギフト。カラフルな売場そのものが、プチギフトにふさわしい商品を売っていることを来店客に気づかせているようです。
GMSや専門小売店など、来店客が商品を自分で選んでレジに持っていく「セルフ販売」のお店では、「ベストコスメアワード特別賞受賞」「上半期ギフト雑貨売上ランキング1位」「肌がもちもちになりました」など、お墨付き情報や口コミ情報などが書かれたPOPやステッカーが、商品に興味を持つきっかけになっています。プチギフトは自分で使ったり食べたりした経験がない商品を選ぶ場合も多く、お墨付きや口コミが、ギフトとして贈ってみたい気持ちの裏付けや後押しとなっています。
また百貨店では、「日本初上陸のフランスのお店」「チョコレートの巨匠が作った洋菓子のお店」など、ショップカードやリーフレットも関心を持つきっかけとなっています。会話のネタのひとつになるような、プチギフトと一緒に渡せる販促物も活用されています。そして、「肌なじみがよいハンドクリームだったから」「癒される香りの紅茶だったから」といった、テスターで試した実感も購入につながっています。試食や試飲も同様で、自分で見て、試すことで相手の喜ぶ顔が想像でき、思いを込めて選んだという自信が購入の後押しとなっています。
リアルなお店では、ギフトを贈る日が楽しみになるような買い物をしているんですね。また、百貨店で購入した4名は、全員が店員と会話していました。デパ地下の洋菓子店では売れ筋商品かどうか、この店以外で買える場所はどこかなどを確認し、コスメ売場では「誰にでも似合う色」のお薦めなどについて、商品のエキスパートとしての店員さんに相談しています。プチギフト販売は、店員による推奨販売の施策としても有効だと考えられますね。
【プチギフトの売場づくりのマーケティングポイント】
○売場認知(VP:Visual Presentation)
売場を特定の色でコーディネートするなど、遠くから見ても目立つ売場にする
○商品確認(PP:Point Presentation)
第三者からの情報(評判広告)を提示する
○購入決定(IP:Item Presentation)
体験を提供する
Chapter4 ラッピング、お店の腕の見せ所です!
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通販サイトでプチギフトを購入しづらい理由として、ラッピングのクオリティが期待できない点が挙げられました。「配送中にリボンが緩むのではないか」「段ボールの中で紙袋に折れ目がつくのではないか」などの不安を感じているようです。プチギフトには、渡す時点までを想定して、丁寧で見栄えのいいラッピングが求められています。店舗はその場でラッピングクオリティが確認できますので、まさにお店の腕の見せ所ですね!
今回の調査で、モニターが選んだラッピングは、百貨店ではお店のロゴの入った紙袋や包装紙を使う「流通ラッピング」と、テナントのブランドの紙袋や包装紙を使う「ブランドラッピング」との2種類がありました。専門小売店では「流通ラッピング」のみで、総合スーパー(GMS)は、お店のロゴがない「汎用ラッピング」という結果でした。
商品を購入した人のラッピングの満足度は「ブランドラッピング」が高く、ブランドカラーの包装紙に包まれたり、ブランドロゴ入りのリボンで飾られたり、商品とラッピングに一体感があることを求めているようです。また、「どこで買ったかを知られたくない」という意見もあり、特にGMSでの購入者でその傾向が高くなりました。「日常の買い物と一緒に、手間をかけずに選んだ」と思われたくない、という理由からのようです。一方、「GMSには品質が良いものが取りそろえられている」という意識も高く、GMSで購入した場合は「自分でラッピングをする」「他のお店で買った商品と合わせてラッピングして贈る」といった使い方をしているようです。
ラッピングには、商品に特別感を持たせる役割があり、クオリティが追求されます。贈った時に、「中には何が入っているのだろう?」という相手の期待感を最大限引き上げる工夫があるといいですね。
普段自分には買わない商品が気になったり、ちょっと高いなと思っても買ってしまったり(予算は2,000円程度だけど)、プチギフト選びって、実は新しい商品との出会いになっているんだなぁ……。女性モニターのみなさん、口をそろえて“プチギフト選びって、ワクワクするし、楽しい!”って答えていました。
なんだかわたしも、プチギフトを贈りたくなってきました。さぁ、街に繰り出そう~っと!
【フィールドマーケティングチームとは】
大日本印刷株式会社で新規事業の開発を担うABセンターという部署にあるコミュニケーション開発本部でできたチームです。
マーケティングで一般に「SP」といえば「セールスプロモーション」のことですが、当チームは「SP=セールス・プロセス」を標榜し、店頭を起点とした情報の収集・分析、戦略・戦術の立案、施策実行などをワンストップで支援するなど、専門家としてセールス・プロセス全体に関わっています。企業の事業戦略についての提案、接客マニュアルの制作、店頭ツールの企画・制作とその評価、店頭ツールの設置代行や推奨販売などまでトータルに行っています。
この「マーケティング分析レポート」シリーズでは、独自の視点で日々店頭を見て・感じて・考えた内容を基に、生活者の購買動向、商品の販売状況、店頭サービスの変化など、「生活者」「メーカー」「流通」の三者が交差する「売り場」のナゼ?にアプローチしていきます。
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