多くの人が一度は使ったことがあるだろう証明写真機。中でもDNPが開発・提供する「Ki-Re-i」は、その名のとおり、人の顔写真をキレイに写せると好評だ。そんな証明写真機が今、IoT化によって、証明写真を撮るだけに留まらない進化を遂げている。証明写真機の未来の姿を、「Ki-Re-i」の開発に携わる宮原舞が語る。聞き手は、5G通信用の製品開発を手掛ける石田太郎。
「証明写真機の進化系。それがオンライン・デバイス・ブース!」
宮原石田さんは証明写真を撮ったことはありますか?
石田はい。就職活動のときと、入社してすぐに撮りました。
宮原DNPの証明写真機「Ki-Re-i」の最大の特長であり原点は、名前にもあるように“キレイ”に、そして正確に撮影できることです。ストロボなどのライティングや配光にもこだわり、肌の色や質感の補正ができる画像処理機能も備えています。さらに、もうひとつ重要な機能があるんです。
石田重要な機能ですか…?
宮原それは、意外に知られていないのですが、「ネットワークにつながっている」ということです。石田さん、マイナンバーカードは持っていますか?
石田はい、持っています。
宮原申請はどうしました?
石田郵送で…。
宮原そういう方は多いと思います。実は「Ki-Re-i」からでも、証明写真を撮るだけでなく、マイナンバーカードの直接申請ができるって知っていました?
石田え! そうなんですか?
宮原マイナンバーカードの申請方法には、①郵送、②スマートフォンから、③パソコンから、④証明写真機から、という4つの方法が用意されています。「Ki-Re-i」を利用するとキレイな写真が撮れて、そのまま電子申請までできちゃいます。一見手軽なスマホからの申請も、自撮りになることがほとんどなので、周囲の光の具合や画質などの影響で、撮影した顔写真がマイナンバーカード申請の規定を満たせずに、差し戻しになってしまうこともあるんです。そうなると余計に手間がかかってしまいますよね。
石田「Ki-Re-i」がネットワークにつながっているからこそ、そのようなサービスができるということですね。
宮原その通りです! ところで石田さん、マイナンバーカードって、何年で更新するか知っていますか?
石田いえ…、知らないです。
宮原10年です(※)。つまり、10年間は最初に撮った写真を使わなければいけないってこと。だからこそ、最初の段階でキレイに撮ってもらいたいな、と思っています。
石田確かに…。
宮原ネットワークを活用したサービスとしては、他にも社員証の顔写真収集サービスなどを行っています。対象となる社員の方が、それぞれの身近にある「Ki-Re-i」で撮影すると、ネットワーク経由でひとつのサーバーに顔写真が集まるという仕組みです。
私たちは今、日本全国に約7,400台の「Ki-Re-i」を設置していて、そのうち約6,500台がネットワークにつながっています(2022年4月時点)。このネットワークを活かすと、このようにいろいろなサービスが展開できるんです。
屋内にも屋外にも置けるデバイスであり、中に人が入れる半個室のブースでもある。さらにそれがネットワークでつながっています。それらの特長をわかりやすく表現するために、私たちは「Ki-Re-i」のことを、従来の「証明写真機」から一歩進んだ、未来の「オンライン・デバイス・ブース」というコンセプトで考えています。このコンセプトのもとで、従来とは別の新たなサービスを考えるのが私たちのミッションです。
「オンライン・デバイス・ブースを日常的に足を運びたくなる存在に」
石田今後5Gなどの高速通信がさらに普及すると、サービスとしてできることも増えそうですね。
宮原その通りです。高速通信は今後、大きなポイントになると思います。
石田高速通信の主な特長は低遅延と高速大容量。特に高速大容量については、「Ki-Re-i」との相性が良さそうですね。「Ki-Re-i」で撮る写真のデータ容量が大きくなっても大丈夫とか、ひとつの画像データだけじゃなく複数のデータも一気に送れるようにするとか。
宮原動画とかも送れたらいいですよね!
石田3Dで動く映像とかも!
宮原「Ki-Re-i」を使ったいろいろなサービス展開を模索しているところですが、通常の証明写真機として利用されている方も多いので、その方たちの妨げにならないように新しいサービスを検討する必要があります。そういった意味でも高速通信は欠かせませんね。
石田オンライン化しているということは、セキュリティの面も重要ですね。
宮原はい。顔写真は最も重要な個人情報のひとつですから、セキュリティの強化は必須です。特に「Ki-Re-i」は顔写真をキレイに撮れるので、“顔=個人を特定できる”と考えると、個人情報としての正確性が高いわけです。今もすでに高度なセキュリティを備えていますが、今後も通信環境の変化などにあわせて継続的に見直していく必要があります。
石田いつでも安心して使えるということですね。
先ほど宮原さんが話してくれた「オンライン・デバイス・ブース」という言葉からは、「『Ki-Re-i』を使ったらいろいろなネットワークサービスを受けられる」、というイメージが浮かんできます。「証明写真を撮るだけでなく他のサービスでも使える、それなら『Ki-Re-i』に行ってみよう!」ってなることが多くなりそうですね。
宮原まさにそういう存在になることを目指しています。生活者が「Ki-Re-i」に足を運ぶ機会を増やすことが、一つの着地点だと考えています。
証明写真を撮る、電子申請をする、だけの用途ではなかなか日常的に継続して使われるわけではありません。たとえば石田さんが「Ki-Re-i」からマイナンバーカードを申請したとしても、次に使用するのは10年後…。こんなに手軽にキレイに写真が撮れるのに、10年に一度しか「Ki-Re-i」に行く機会がないなんてもったいないです!
石田「Ki-Re-i」への思い入れがやっぱりすごいですね。
宮原私、写真大好きなんです! 写真に関わる仕事がしたくてDNPに入社したくらいですから(笑)。
石田良く伝わります(笑)。
「Ki-Re-iと5G通信フィルムアンテナ。掛け合わせたら可能性が広がりそうです」
石田「Ki-Re-i」で写真を撮る機会を増やしていく、というのは、具体的にどんなことを考えているんですか?
宮原たとえばエンタメ系やビューティー系。どんなメイクが似合うのかなど、顔や表情を使ったサービスは「Ki-Re-i」との親和性が高いので、新しいビジネスチャンスがあると考えています。
石田なるほど。「Ki-Re-i」の強みが正確性だとすると、ヘルスケアとかにも応用できそうですね。
宮原そうですね。今は、20年以上の歴史を持つ「Ki-Re-i」のリブランディングをしている最中なので、いろいろな可能性を探っていきたいです。私たちの事業部では、そのための4つの軸を設定しています。
石田詳しく教えてもらえますか。
宮原まず、今後加速していく「デジタル社会への対応」。そして2つ目が時代に合わせた「新しい撮影体験の提供」です。次の3つ目は、「暮らしのプラットフォーム化・インフラ化」。これは、個人情報の安全性をさらに強化したうえで電子申請を行えるようにすることで、生活をより便利にするインフラのような存在にしていくことです。最後の4つ目が「顧客とのエンゲージメント」。これは、生活者の皆さんが求めるサービスをより最適化し、末永く価値提供ができるよう進化させていくという考えです。
ではここで石田さん! 石田さんの専門領域でもある「デジタル社会への対応」という点で、何かご意見ありますか?
石田「Ki-Re-i」には正確に撮影できるという強みがあるので、それを活かした顔認証のデータベース化ができると面白そうだと思いました。セキュリティ面の不安は常にあるものですが、「『Ki-Re-i』であればデータを送ってもいい」という信頼感を担保していけると良いですね。
宮原そうですね。DNPには顔認証を専門にしている部門もありますので、今後連携して取り組んでいきたいです。
「オンライン・デバイス・ブース」は大きな可能性を秘めています。その可能性をさらに広げつつ、生活者の様々なニーズを取り入れながら開発を進めていきたいです。
そのうえで、石田さんが担当している5G通信に対応したフィルムアンテナの機能はかなり魅力的です。「Ki-Re-i」はすでに街中に設置されていますので、それを活用して“アンテナ化”していただくなど、意味の大きなコラボができそうな気がしています。
石田かなり接点がありそうですよね。「Ki-Re-i」が高速通信化すれば、実現できるサービスも広がりますからね。フィルムアンテナもその力になれるかもしれません。
宮原そうなんです。私も関わりのある研究開発担当メンバーとは定期的に情報交換をしていますが、一見関係のなさそうな分野でも何かつながる点があるかもしれない!って、石田さんとのお話を通して実感することができました。グループ内の部門の壁を越えていろんな強みを掛け合わせる「オールDNP」の活動の一環として、今後そういった機会を増やしていきたいと思いました。
石田今日宮原さんの話を聞くまでは、「Ki-Re-i」という名前は知っていたものの、今できることやこれからやろうとしていることは知りませんでした。長い歴史を持つ「Ki-Re-i」というデバイスに新たな価値を加えるために、様々なことを考え、行動していることが伝わりました。フィルムアンテナとの親和性もありそうなので、今後、コラボできたらうれしいです。
宮原私もすごく勉強になりました。全国の好立地に設置している「Ki-Re-i」の強みを活かしながら、お互いの製品・サービスをつなげていきたいですね。今後もお互いに協力し合っていきましょう!
石田今日は本当にありがとうございました。
宮原こちらこそありがとうございました!
2022年8月公開