ミリ波の到達エリアを広げる
5Gミリ波反射板 リフレクトアレイ
5G通信で使用されるミリ波を狙った方向に反射できる特殊な電波反射板です。一般の金属反射板に比べ設置時の制約が少なく、建物の陰などの電波が届きにくい場所の通信環境を改善します。また、設置環境を考慮したデザインにも対応可能です。
背景
第5世代移動通信システム(5G)では、既存のLTE(4G)よりも高周波であるsub6帯(3.6GHz~)及びミリ波帯の電波(24GHz~)が使用されます。ミリ波は、伝送情報容量が大きい反面、電波の直進性が高く、到達距離が短いという特徴があり、そのため、建造物等による遮蔽(しゃへい)により電波が急激に減衰し、通信品質を確保できない「カバレッジホール(不感地帯/不感地域)」が発生しやすいという問題があります。基地局や中継機を増設することでこの問題は解決しますが、それにはコストや設置する場所の確保など、様々なハードルが存在します。
これらの課題の解決に向けて、DNPは基地局に比べて低コストで容易に設置可能、かつ電源も不要な独自のコンセプトによる「リフレクトアレイ」を開発いたしました。
リフレクトアレイとは?
リフレクトアレイ(Reflect Array、メタサーフェス反射板とも呼ばれる)は、その特殊な構造によって、特定の周波数の電波を非対称に反射させることができる反射板です。電波を鏡のように正反射する金属反射板とは異なり、反射する周波数帯や、入射方向と反射方向、あるいは反射波の広がり方(ビームプロファイル)を、自由に設計することが可能です。そのため、カバレッジホールに対して、基地局を増設することなく、効果的な電波状況の改善を行うことができます。
DNPリフレクトアレイの特長
DNPのリフレクトアレイは優れた微細加工技術を応用し、特殊な電波反射特性を実現しています。
■電波状況を効果的に改善
反射ビームプロファイルを調整することができます。
・ビームを広げることで、単純な反射板よりも広いエリアの電波状況改善が可能
・電波が弱い環境にある特定の装置へ、反射ビームを集めることも可能
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■多段反射に対応
反射ビームをさらに別のリフレクトアレイで反射させる使い方ができます。
・一枚だけでは届かないエリアへ電波を届けることが可能
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■多様な場所に設置可能
基地局、カバレッジホールとの位置関係で決まる入射角・反射角設計の自由度を確保できます。
・設置する場所が限定される場合でも、対応した入射角・反射角を設定可能
■既存の電波への影響軽減
対象とする周波数帯の電波のみを反射しそれ以外を透過させることができます。
・ミリ波よりも低い周波数帯の通信に対して、設置による遮蔽の影響が小さい
・対象周波数以外を、金属板と同じように透過させないことも可能
■設置場所に応じた意匠性
内装、外壁、看板など、多様な外観に応じたデザインが可能です。
DNPリフレクトアレイの有効性
DNPのリフレクトアレイの有効性を確認するため、NTT東日本(東日本電信電話株式会社)様と国立大学法人東京大学様が共同で設立したローカル5Gの検証環境「ローカル5Gオープンラボ」にて、効果の確認を行いました。
■リフレクトアレイによる通信環境の改善
基地局からの電波が届きにくい非常階段エリアに向けて、電波をスポットビームで反射するリフレクトアレイを設計・作製しました。非常階段エリアにおける、通信端末の平均スループット(データ転送速度)は、リフレクトアレイの設置によって、ダウンロード/アップロード共に大きく改善し、最大では基地局正面と同等レベルの速度も示しました。また、基地局からの信号強度の指標である端末での受信電力や、信号品質の目安であるSINR(Signal to Interference plus Noise Ratio)の値も改善しており、DNPのリフレクトアレイは通信環境の改善に有効であることが確認できました。
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■リフレクトアレイによる多段反射
基地局からの電波を、リフレクトアレイを使って非常階段エリアの入り口に向けて反射させた場合には、入り口の陰になったエリアには電波を直接届けることができません。そこで、非常階段の踊り場にワイド反射タイプのリフレクトアレイを追加で設置し、基地局から見て1枚目のリフレクトアレイ(RA1)で反射されたビームが、2枚目のリフレクトアレイ(RA2)でさらに反射される位置関係としました。
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RA2の反射ビームが届く位置においてダウンロード速度を計測したところ、RA1+RA2の2段反射ではRA1のみの場合に比べてダウンロード速度が改善し、最大で基地局正面と同等レベルの速度も示しました。このことから、DNPのリフレクトアレイを複数枚組み合わせることで、効果的にカバーエリアを拡大できることが確認できました。
DNPリフレクトアレイの構成
DNPのリフレクトアレイは独立した機能を持つ3層構成となっています。
< 周波数選択反射層>
(Frequency Selective Surfaces: FSS層)
・所定の周波数帯を選択的に反射し、それ以外の電波は透過
・デザインカバー層とセットで、特性をチューニング
・周波数帯ごとに共通な仕様
※精密エッチングで形成された導電パターンによる機能です。
<反射方向制御層>
・周波数選択反射層で反射される電波の入射/反射方向を決める特殊な誘電体層
・基地局とカバレッジホールの位置関係に応じた多様な入射/反射方向に対応
・反射ビームプロファイルの調整にも対応
<加飾層(デザインカバー層)>
・リフレクトアレイの特性を維持しつつ他の2層を保護
・各種意匠への対応(デザインの自由度が高い)
・擦り傷・汚れに強い(内装・外壁など)
※DNPにて提供する、各種建装材との組み合わせが可能です。
※一部、電波に影響を与える材料を使用したものは除きます。
活用シーン
IoT、ロボットなどを活用する、スマートシティ、スマートファクトリーの実現に向け、5Gの導入検討や具体化が始まっています。しかし、ミリ波にとっての遮蔽物も多く存在し、カバレッジホールも発生しやすいことが予想されます。
■市街地
ビルの外壁や看板広告などに調和させつつ通信環境を改善
■工場
スマートファクトリー内の電波遮蔽物裏の通信環境の改善
■事業所や教育現場
モバイル機器の利用が想定される範囲をまんべんなく通信可能に
■展示会場
イベントごとに組み替えられるレイアウト・電波遮蔽状態への対応
■競技場やアミューズメント施設
エリア限定での情報配信における電波環境の改善
今後の展開
DNPは、通信キャリアを含めた各種通信関連会社等と共同で本製品の機能検証などを進め、2023年度からの実用化をめざします。
関連リンク
よくある質問
Q: 実際に評価してみたいのですがサンプル提供は可能でしょうか? | A: ご利用のミリ波の周波数や設置場所の環境など、幾つかお聞かせいただく必要がございますので、個別にお問い合わせください。 |
Q: 対応しているのは、ミリ波だけでしょうか? | A: 現時点では、ミリ波以外の予定はございませんが、ご相談内容に応じて対応致します。 |
Q: 試作費用、リードタイムについて知りたいのですが? | A: 打合せ等で御要望の詳細をお伺いした後、個別に検討させていただきます。 |
まずは、お気軽に御相談下さい。