情報処理:成り立ちと発展

印刷のデジタル化とともに情報処理技術を独自に発展

証券印刷物のイメージ画像。

DNPでは明治30年頃から公債証書や株券などの「証券印刷」を行っていました。
証券には彩紋と呼ばれる模様があり、非常に細かい加工を一つ一つ手彫りで、熟練した職人が制作していました。セキュリティを確保するためには高度な技術が必要だったのです。
当時は、目に見える形でのセキュリティを確保していましたが、時代が進化するにつれ、目に見えない形でのセキュリティを施すようになり、1980年代に書き換え可能なICカードの原型を開発しました。

印刷においては、入稿されるテキスト、写真、イラスト、動画など、さまざまな形態の情報のフォーマットを整え、データを最適な形に変換し、処理画像の色調マネジメント、情報の整理・保管を行います。必然的に大容量データのハンドリングノウハウが蓄積され、ビッグデータの加工・解析、セキュリティ技術へと拡がってきました。
DNPでは、印刷のデジタル化とともに、画像処理やメディア変換など、多岐にわたる企画・設計・情報処理の技術を独自に開発、発展させてきました。

VR(バーチャル・リアリティ)

印刷事業で培った画像処理技術をVRに応用。

画像処理・言語処理技術

DNPは印刷事業で扱う文字や画像データのデジタル化に伴い、画像処理や自然言語処理の開発に取り組み、その技術を発展させてきました。そこで培った知見を活かし、AI 技術を活用したさらなる開発にも取り組んでいます。静止画像や動画像から有益な情報を抽出する画像認識技術や、限りなく実物に近い画像を再現できるCGやVR技術、人の自然な言葉の意味を理解する自然言語処理技術などを活用し、情報メディアの制作、流通だけでなく、セキュリティやマーケティング、イメージング、教育、医療、エンタテインメントなど幅広い分野で、画像処理・言語処理技術を応用展開しています。

フォトリアルCGを活用したVRの取り組み

VRモデルルームのイメージ画像。

昨今の労働力減少や働き方改革、インターネット通販の普及やICT技術の革新により、商品を販売する店舗の在り方や消費者のショッピングスタイルが変化してきています。そのような中、店舗に来訪した顧客に最適な購買体験を提供し、満足度を向上させる新たな取り組みが注目されています。

DNPでは、VR(バーチャル・リアリティ)で実物と同等の顧客体験によって、商品の購買判断ができる「VRショールーム」、「VRモデルルーム」システムを開発し、自動車のショールームやマンションのモデルルームを運営する企業に提供。このシステムは、大画面ディスプレイやヘッドマウントディスプレイを装着して、フォトリアルなCGであたかもその場に商品があるような体験を可能にしています。自動車のショールームでは、好みの車種や色、オプションなどを選び、顧客の望む仕様の車をその場で確認することができます。マンションのモデルルームでは、異なる複数の間取りやインテリアコーディネートを体験可能です。

このシステムでは、CADデータや設計図面等をもとに、限りなく実物に近い三次元のCGデータを制作し、VR空間で本物と感じることができるレベルのフォトリアルCG 表現を実現しています。これまで、VRのような自由度の高いインタラクティブなシステムでは、コンピュータの計算負荷が高くなるためフォトリアルなCG表現は困難でした。それを印刷事業で培った高度な画像処理技術とVR技術を組み合わせて最適化することで、可能にしました。
VRによるフォトリアルな商品提示に留まらず、AR(オーギュメンテッド・リアリティ)技術の活用やAIを搭載した接客機能などを取り入れることで、新しい購買体験を提供していきます。

ICカード

重要性・機密性の高い印刷物を扱ってきた実績から、堅牢で安全・安心な取引を実現。

情報セキュリティ技術

DNPは3つのコア技術「ICカードOS・アプリケーション開発技術」、「I C カード発行技術」、「ネットワーク・サーバシステム開発・運用技術」を保有し、これらの技術を高度化することで、ICカードの製造・発行や周辺サービスの開発に加え、キャッシュレスを実現する決済サービスの開発・運用など、さまざまな製品・サービスに展開しています。

ICカードとは

ICカードのイメージ画像。

ICカードとは、ICチップが組み込まれ、セキュリティデータなどを記憶する不揮発性メモリとCPUが搭載されているカードで、「接触型カード」、「非接触型カード」、接触・非接触複合の「デュアルインターフェースカード」があります。

国内では1960年代に金融機関にコンピュータが導入されはじめ、事務合理化の一環としてビジネスフォーム(帳票)関連の印刷需要が高まった。70 年代からは銀行でキャッシュディスペンサーやATMの導入が進み、一気にキャッシュカードが普及しました。その後、クレジットカードや会員カードも普及し、80 年代後半には磁気カードの累計発行枚数が約1億枚に達しました。
DNPは 60 年代後半から磁気カードの開発を行い、70年代の終わり頃には大量生産体制が整い、国内トップレベルの磁気カードメーカーとして市場をリードしてきました。その後、通帳への磁気バー導入、キャッシュカードと連携した多様なサービスの提供などを行うとともに、ICカード化の流れを先導してきました。

現在も国内トップレベルのシェアを維持しており、クレジットカードや交通系カード、電子マネーカードにいたるまで、さまざまな業種・業態に利用することができるICカードを提供しています。また、国内の電子マネーや社員証などで普及している非接触ICカードの技術方式「FeliCa」に対応した指紋認証による生体認証カードを開発するなど、進化を続けています。

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印刷技術の拡がりと高度化