2020/1/8
「統合型校務支援システム」の現状とこれから
~業務の効率化から、データに基づく教育の質の向上へ~
学校の働き方改革が緊喫な課題になる中で、教員の業務負担を減らす役割を担うものとして注目を集める「統合型校務支援システム」ですが、単なる業務効率化だけでなく、校務システムのデータと学習記録データ等を連携して教育の質の向上を図る取組みも進みつつあります。
「統合型校務支援システム」の必要性
統合型校務支援システムとは、「教務系(成績処理、出欠管理、時数管理等)・保健系(健康診断票、保健室来室管理等)、学籍系(指導要録等)、学校事務系など統合した機能を有しているシステム」を指し、成績処理等だけでなく、グループウェアの活用による情報共有も含め、広く「校務」と呼ばれる業務全般を実施するために必要となる機能を実装したシステムです。
統合型校務支援システムを導入することで、それまで「手書き」「手作業」で行っていた作業がシステムを通して処理することができるようになり、業務の効率化・負担軽減を図ることができます。また、教職員による学校・学級経営に必要な情報や児童・生徒情報の一元管理、共有が可能となり、結果として教員が子どもと向き合う時間を確保し、「教育の質的向上」につなげることができます。
成績処理等に費やす時間を年間120時間削減
統合型校務支援システムを導入した自治体の中には、教員一人当たりの勤務時間数を1年間で200時間以上削減したところもあり、教員の多忙化を解消する観点から導入促進を図ることが有効と考えられています。
2019年1月25日の中央教育審議会による「学校の働き方改革」の答申でも、教員の業務だが、負担軽減が可能な業務として「学習評価や成績処理」が挙げられており、ICTを活用することで効率化することを求めています。
その中では、小・中学校の取組み事例として統合型校務支援システムの活用による成績処理等に係る負担軽減を、平日30分×約245日(勤務日)で年間約120時間を削減できると示し、文部科学省には作業を効率的に行うためのICT機器やネットワーク環境等の整備を急ぐことを要望しています。つまり、統合型校務支援システムの導入によって、不要な業務や効率化すべき業務の見直しを組織的に図ることが可能になるのです。
エビデンスを「見える化」できる校務支援システムを
さらに、文部科学省が2016年に公表した「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」最終まとめでは、データの効果的活用を通じて、個に応じた学習指導と学級・学校経営を支援する「スマートスクール構想」の観点から、新たな「統合型校務支援システム」の必要性が示されました。
ここで重視するのは、校務支援システムを帳票の電子化としての機能にとどめず、授業や学習システムと連携させることにより、学習記録データ等を蓄積・分析に活かすことにあります。すなわち、学びを可視化することで、児童生徒自らの学習の振り返りや教員の指導力向上、学級・学校経営の改善など、教育の質の向上を図る手段として活用することが期待されており、2017年からの「次世代学校支援モデル構築事業」等でも実証研究が進められています。
大阪市/児童生徒に関わる情報を集約して可視化
そんな統合型校務支援システムによる校務の効率化に加え、授業・学習系データを集約・可視化することで、教育の質を高める実証を行っているのが、同事業の実証地域の一つである大阪府大阪市です。
同市の実証校では、単元テスト、定期テストの採点にICTを取り入れることで、教員の業務効率化を実現するとともに、集計・分析された学習データに基づき、個別指導、学級指導、授業の振り返りなどに活用することで、教育効果を高める指導につなげています。
今月22日(水)に開催される下記セミナーにて、大阪市教育委員会ならびに実証校の中学校より「次世代学校支援モデル構築事業」の取組み事例の発表があります。ご興味のある方はぜひ、この機会にご参加ください。