半導体製造のカーボンニュートラルに貢献する

ナノインプリントリソグラフィ(NIL)

高性能な半導体に必要となる微細パターンを形成することができる技術です。半導体製造時の露光工程における消費電力を、従来の技術と比較して約1/10に低減させることが可能です。

「第49回 環境賞」を受賞しました!

大日本印刷株式会社、キヤノン株式会社、キオクシア株式会社の3社が共同で開発する「NILによる超微細半導体の省エネルギー加工技術」が、国立研究開発法人 国立環境研究所/日刊工業新聞社主催、環境省後援の「第49回 環境賞」で優良賞を受賞しました(2022年5月10日発表)。



背景

高性能な半導体には、より微細な回路形成が必要になります

スマートフォンやタブレット端末等のデジタル機器の進化、第5世代移動通信システム(5G)やIoTの普及にともない、高性能化が進む半導体製品。その実現には、より微細な回路形成が必要となりますが、従来の技術では半導体製造で膨大な電力を使用するため、近年「微細化」を実現しつつ、消費電力の少ない新たな半導体製造技術が求められています。

こうした課題の解決に向けてDNPは、長年培ってきた微細加工技術をベースに、次世代の半導体製造で期待される「ナノインプリントリソグラフィ(NIL:Nano-Imprint Lithography)」を開発しました。

ナノインプリントリソグラフィとは?

ナノインプリントリソグラフィは、基板上の塗布した樹脂に回路パターンを形成したテンプレート(版)をハンコのように圧着させて作る超微細な凹凸パターンの樹脂を使って、nm(ナノメートル)オーダーの回路パターンを作製する技術です。

ナノインプリントリソグラフィの製造工程フロー

1. 基板に塗布した未硬化の状態のUV硬化樹脂に、テンプレート(版)を押し当てる
2. UV光(紫外線)を照射し、樹脂を硬化させる
3. テンプレート(版)を離型して、樹脂パターンを形成
4. 回路パターンの凹凸を転写した基板が完成

ナノインプリントリソグラフィで消費電力は1/10に

昨今、半導体には、さらなる高性能化が求められている中、処理速度の向上を目的とした回路の微細化・集積化に伴い、製造時の消費電力が大きくなってしまうという課題があります。
また、日本政府が推進するデジタルインフラの強化で拡大が見込まれる半導体市場を支える技術的条件として、製造時の消費電力の低減を必須としております。

半導体デバイス製造時の消費電力は上昇傾向にある中、NIL(ナノインプリントリソグラフィ)を使用すると、露光工程における消費電力を従来方式の約1/10に抑えることができます

DNPは、2003年よりナノインプリントリソグラフィ用テンプレート(版)の開発に取り組んでおり、キヤノン株式会社、キオクシア株式会社とDNPの3社が協力して開発したナノインプリントリソグラフィにおいて、半導体製造における露光工程の消費電力を従来手法の約1/10に抑制できることに成功しました。これにより、製造コストの削減も可能にするなど、半導体メーカーのカーボンニュートラルの実現に大きく貢献できると考えております。

再生時間:1分41秒(音声が流れますので、音量設定に御注意ください)

開発の経緯はこちら

今後の展開:「3次元テンプレート」の作製

ナノインプリントリソグラフィにより作製した、様々な3次元テンプレートのGIF画像

※動画内の画像は、全て電子顕微鏡により撮影したものです。

またDNPは、回路パターンにおける版の凹凸を基材に押し当てて転写するナノインプリントリソグラフィの製造方式を活かし、立体形状テンプレートの開発も進めています。この方式を採用することにより、自由な立体形状を形成することが可能となるため、これまでにない新しい素子や機能の実現が期待されています。すでにさまざまな形状のサンプルも作製しておリ、今後の3次元テンプレートへの応用展開が期待されます。

DNPのナノインプリントリソグラフィ 特長

半導体デバイス製造時のコストを比較すると、従来方式と比較して製造プロセスが短く装置が安価なナノインプリントリソグラフィは、低コストでの製造が可能です

■低消費電力
露光時の消費電力 1/10(従来方式との比較)
■低環境負荷
薬液不使用のため、環境負荷が低い
■低コスト
製造プロセスが短く装置が安価なため、低コストでの製造が可能
■微細パターン
光回折効果が生じないため、設計の自由度が高い

テレビCM

「市村のナノインプリントリソグラフィ」篇/DNP×DNP

再生時間:30秒(音声が流れますので、音量設定に御注意ください)

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よくある質問

Q. この技術は、すでに半導体の製造に使用されているのでしょうか? A. 半導体の量産で使用可能なレベルまで到達しており、今後の量産適用に向けた準備を進めています。
Q. この技術を使用することで、カーボンニュートラルになるのでしょうか。 A. 消費電力を大幅に削減できますので、残った電力を再生エネルギーでかまなうことにより、カーボンニュートラルの達成が容易になると考えられます。
Q. この技術は半導体製造以外の分野でも活用できるのでしょうか? A. 光の動きを制御する「光学素子」においても微細なパターンが必要とされており、同技術が使われる有力候補であると思われます。

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