フジッコ株式会社
めざしたのは商品情報の一元化だけでなく、 商品企画・開発プロセスにおけるフローの可視化 PIMが導くフジッコDX 2.0のビジネス変革
昆布と豆のロングセラー商品を擁し、価値を追究しながら、「おいしさ、けんこう、つぎつぎ、わくわく。」をスローガンに、美味しさと健康にこだわり、未来に挑戦し続けているフジッコ株式会社様。同社は2023年にContentservを導入し、 商品情報の一元化とガバナンスを強化するためのPIMを構築。その背景と効果などについて、コア事業本部 おかず事業部 課長 兼 マーケティングDX推進課 課長 初鹿 貴則氏に伺いました。 (2024年7月時点の情報です)
|
全社的にフジッコDXに取り組む
Contentserv導入は、DXの取組み の一環と伺っています。「フジッコDX」についてお聞かせください。
創業60周年を機に、企業風土改革と生産性向上を一体的に進める“ニュー・フジッコ”の経営改革が2020年からスタートし、「注力商品SKUの選択集中」「取引先とのオンライン化推進」「DX推進」「働き方改革の推進」などを大胆に進めてきました。そのなかの「DX推進」については、さらなる前進をめざしてフジッコDXと定め、2022年度には代表取締役社長執行役員 福井 正一を委員長とするDX推進委員会が発足。現在は各本部内にDX推進部門を設置し、全社的にフジッコDXに取り組んでいます。
フジッコDXには1.0と2.0の定義があり、フジッコDX 1.0はデジタルを使った自動化を推進し、業務効率化を実現するビジネス最適化という取組みになります。フジッコDX 2.0は最適化された環境を活用し、売り上げの拡大・創出に向けてビジネス自体を変革していくDX本来の取組みとなります。
商品情報があちこちに点在している状況を是正したい
Contentserv導入に至った背景をお聞かせください。
商品情報の一元管理とガバナンス強化のために、商品情報管理システム(PIM:Product Information Management)が必要でした。まず、商品情報には、ベースとなる基幹システムの商品マスタ、そして、企画・開発側の食品品質情報管理システムのデータなどがあります。基幹システムのデータは決済のための商品マスタであり、食品品質情報管理システムのデータは社員でもアクセスが限定されるコンフィデンシャルなもののため、プロモーション・営業用の商品情報は別途必要でした。結局、プロモーション・営業用に利用する際は、基幹システムの商品マスタと食品品質情報管理システムのデータの一部(公開されている商品情報)、そして担当部門へのヒアリングなどで得られた情報をもとに、担当部門の各自がExcelやWordに落とし込む個別管理が主体。そのため、あちこちに商品情報が点在している状況でした。
また、商品企画・開発の上流から下流を含め、商品情報の編集権限、承認フローのルール化といった課題もあったため、ガバナンスの強化が挙がっていました。これらを解決するには、少なくとも商品情報を一元的に管理する必要があるという結論に達し、フジッコDXのもとPIMを導入する運びになりました。
アジャイル的な改修が可能なSaaSのContentserv
PIMの比較・検討はされましたか。
経験上、スクラッチ開発は膨大な時間とコストを要するため、当初から検討外でした。今回はリプレースではなく、ゼロベースでPIMを導入するわけですから、利用者がシステムに合わせることを前提に、2社から提案いただいたパッケージ製品を比較・検討しました。その内の1社である、当社商品の印刷物制作などで尽力いただいているDNP提案のContentservを選定した理由は、以下の通りとなります。
<軽快かつスピーディーに導入できるSaaSのシステム>
当社はSKUの数がそれほど多くないため、仰々しいシステムよりも軽快感を求めていました。それに合致したのがSaaSのContentservです。スピーディーに導入できる点も魅力でした。
<導入後のアジャイル的な改修が可能>
ゼロからのスタートを考慮すると、最初から完璧なシステムができるとは思っていません。世の中、アジャイル開発が主流になりつつありますから、当社としては利用しながら改善点を見つけて改修し、より良いシステムをめざしていきたいと考えていました。そのためには、SaaSのシステムながらカスタマイズが可能なContentservはベストな選択でした。
商品企画・開発フロー全体を可視化できるPIMが必要
構築フェーズでの要件があればお聞かせください。
商品がある程度完成された段階でPIMに入力するのが一般的かと思いますが、当社の場合は企画・開発段階からPIMを活用したいという想いがありました。加えて、商品情報の一元化とガバナンスの強化も必須要件です。これらを実現するには、単に基本情報、マーケティング情報、プロモーション情報といった商品情報の塊ではなく、商品企画・開発のプロセスごとに承認を設け、承認されたプロセスを商品情報のひとつとして位置づけ、フロー全体を可視化できるPIMが必要でした。この仕様であれば、商品企画・開発部門はどのプロセスに必要な情報があるか、容易に判断することができます。
とはいえ、さまざまなシステムから流入してくる商品情報の塊をデータとして取り込んで平準化するスタイルが、一般的なPIMの思想だと認識しています。当初、DNPさんもそのように考えていたと思います。実際、DNPさんの話では、当社のような使い方を希望する企業はほぼないが、できないというわけではないとのことでした。そこで当社の要望を伝え、それを共通認識とさせていただきました。おかげさまで、最終的には我々が要望するPIMを完成させることができました。
先ほどの要件について、具体的な仕組みを教えていただけますか。
商品情報の入力側は、1-1、1-2、1-3といったタブを商品プロセスに沿ってつくる仕組みとなります。例えば、1-1にはベースとなる基本の商品情報を入力。その商品情報がワークフローの機能で承認されれば、次の1-2を作成することができます。
ユーザーの営業部門は、承認されている正確な商品情報をピックアップし、取引先に対して計画的に提案することが可能。もちろん、社外秘情報については、ユーザーが見ることはできません。こうした情報のコントロールは、Contentservの権限設定によって自由に行うことができます。
2025年3月を目標に本稼働を目指す
Contentservの構築プロセスと現在の運用状況を教えてください。
DNPさんから2022年12月に提案を受け、実際にContentserv導入のプロジェクトがスタートしたのは2023年5月になります。年末には構築が完了し、2024年1月にカットオーバーとなりました。現在の運用状況は、冒頭で申し上げた通り、各本部内にDX推進部門を設置するという体制変更などがあったため、PIMに関わる一部の人がテスト的に使っている程度で、本格的な運用には至っていません。
ロードマップとしては、年内には既存商品の情報をすべて入力し終え、ユーザー側が商品情報をアウトプットできる状況をつくっていきたいと考えています。そして、2025年3月を目標に本稼働を目指していきます。
ロードマップを達成するうえで重要なのは、「PIMは自分たちでつくり上げていくシステム」ということをしっかり社内に訴求していくことだと認識しています。ただし、単に勉強会を開催するだけでは、リテラシーの向上は難しいと考えています。我々がリテラシーの向上を促すために必要だと考えるのは、PIMを利用する意味や価値の定量化。早急に「作業時間を〇〇時間削減できる」といった具体的な定量的効果を算出するつもりです。
スピード&良い商品づくりのため、PIMをハブに位置づける
今後の展開をお聞かせください。
PIMをハブに位置づけ、フジッコDX 2.0のビジネス改革につなげていく取組みを行っていきます。PIMは、基幹システムおよび食品品質情報管理システムとCSV経由で連携しており、必要な商品情報をPIMに集約することが可能。また、ユーザーが利用する際は、CSV経由でSFAやWebサイトと連携する仕様です。PIMが正しく機能すれば、余計な手間や労力をかけることなく、スピード感を持ってより良い商品をつくることができると考えています。
同時にユーザーが利用しやすいアウトプットの仕組みも大事になってきます。具体的には、「営業に必要な情報はここを見れば全部揃ってる」といった仕組み。これには、Contentservを選定した理由でもあるアジャイル的な改修が役立つはずです。改修と改善を繰り返すことで、より良いアウトプットに近づけることができると考えています。
ビジネスパートナーとして、さらなる関与を求む
DNPに対する今後の期待をお願いします。
今回のPIMは、フジッコDX 2.0を推進するうえでもっとも重要なシステムのひとつであるのは間違いありません。だからこそ、Contentservの知見やノウハウが豊富なDNPさんの支援は何よりも欠かせません。ぜひ、以下の支援を期待しています。
<Contentservの翻訳者>
Contentservは随時、機能拡張が行われる進化するシステムと伺っています。ただ、拡張された機能を当社が享受できるかどうかについては、我々だけでは理解が難しいところがあります。そこでDNPさんには、Contentservの機能を分かりやすく伝える翻訳者の役割を担ってほしいと考えています。具体的には、フジッコDXという枠組みのなかでContentservを最大活用できる提案を期待しています。
<良きアドバイザーとして参画>
Contentservのベンダーという立場だけでなく、ビジネスパートナーとして当社のフジッコDX 2.0にも積極的に関わってほしいという希望があります。そもそも当社は食品製造業ですから、ITやDXに特化した人材が豊富に揃っているわけはありません。ですから、PIMを最大限に活用するための体制や組織づくりなどについても、アドバイザーとして積極的に関与してほしいと願っています。
特にディスカッションしたいのは、現状の課題「As is」とあるべき姿「To be」のフレームワーク。明確なゴールを設定し、そのゴールに向かうプロセスをディスカッションできればと考えています。幸い、DNPさんはカスタマージャーニーづくりに長(た)けていると伺ってます。ぜひ、そのノウハウを当社に共有いただき、今年、来年はもちろん、10年先を見据えた提案を期待しています。
|
フジッコ株式会社様
自然の恵みに感謝し、人々を元気で幸せにする健康創造企業。「ふじっ子煮」や「おまめさん」など、美味しさと健康にこだわった佃煮、塩こんぶ、とろろ昆布、だし昆布・海産乾物、煮豆、水煮・蒸し豆、お惣菜、ヨーグルト、デザートシリーズ、スープ・料理の素などを展開。
社名:フジッコ株式会社
創業:1960年11月
資本金:65億6,653万円(2024年3月31日現在)