味の素冷凍食品株式会社様
DNPの教育CSR支援サービス「出前授業」が生み出す社内エンゲージメント強化とブランディング
味の素冷凍食品株式会社様(以下、味の素冷凍食品様)は、2023年の秋に、関東圏6つの小学校で約 670名の児童に対して 食品ロスをテーマにした「出前授業」を実施し、その一部をDNPが支援しました。味の素冷凍食品様に、出前授業実施に至った経緯、効果、今後の期待などを伺いました。 2024年8月公開
目次
1.社会に向けて環境貢献の取り組みを伝える「顧客接点」に課題
味の素冷凍食品様では、基本価値である「簡便・時短」「経済性」「フードロス削減」と、 味の素グループならではの付加価値「おいしさNo.1」「楽しさ」「健康・栄養」の提供に加えて、「環境への配慮」として、「温室効果ガス削減」「フードロス削減」 「プラスチック削減」「サステナブル調達」の取り組みを追加し強化していくことで、社会課題解決や生活者ニーズに対応する「ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)」を推進しています。また、同社は持続可能な開発目標であるSDGs17のゴールの目標12の「つくる責任、つかう責任」への実現を目指し、企業をあげてサステナブル調達への取り組みを推し進めています。
「フードロス削減」はもちろんのこと、「サステナブル調達」においては製造過程から出た廃棄物を飼料化、肥料化するなど、さまざまな再利用に取り組み、その結果2022年度以降は、国内工場の熱回収分も含めた資源化率100%を達成しています。同社の戦略コミュニケーション部では、このような環境への取り組みが成果を挙げてきている一方、環境貢献の取り組みを社会へ発信することや、その発信を通じたブランディングに課題を抱えていました。この取り組みを社会に発信するためのひとつの施策として、子どもたちへの接点を探していました。
「私たちは、食品メーカーとして身近な存在ではありますが、商品以外での生活者の皆さまとの接点があまりなく、企業活動の取り組みをお伝えする機会が少ないという点に常に課題を持っています。コロナ前には、工場がある地域の子どもたちを中心に工場見学を受け入れる活動を行っていましたが、工場という接点だけでは、なかなか認知の広がりにまでつなげることは難しい面があります。
一方で、SDGsに対する関心の高まりの中で、「食育」や「食品ロス」といったテーマは、学校教育でも取り上げられるテーマとなっています。 子どもたちを通じて冷凍食品の価値と環境への取り組みを伝えることで、味の素冷凍食品をより身近に感じてもらいたいと考えていました」(戦略コミュニケーション部 PRグループ 内貴さん、以下同じ)
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2.数カ月の準備期間で「フードロス削減」の出前授業を実施
同社では、2023年の夏〜秋にかけてタレント事務所とのコラボ企画として、「フードロス削減」「資源化率100%」などをテーマにしたYouTube動画によるPR活動を実施していました。そのコンテンツも活用しながら、さらに情報発信のチャネルを拡大できないかを検討されていました。
「DNPさんに動画コンテンツ活用について相談していたところ、出前授業を通じて子どもたちと接点を持ってはどうかと提案をいただきました。YouTube動画でのPRが継続している期間内に施策を実施できるということもあり、すぐにプロジェクトが始動しました。この出前授業プロジェクトに先立って、私たちは四国のリサイクル工場を訪問し、廃棄物であった生ゴミが活用されて堆肥が作られ、実際に畑で使われているまでの一連の変化をこの目で初めて確認してきました。その時に撮影した写真を今回の出前授業の中でも活用しています!」
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出前授業は、関東近郊の6校で実施されました。授業は、味の素冷凍食品のコーポレートキャラクターである「あじペンⓇ」を案内役にした「あじペンⓇノート」を使った45分間です。冒頭では、簡単な事業紹介と環境への取り組みに続いてYouTube動画で「食品ロス削減」について解説。その後、ノートを使ったワークで、食品ロスや資源化率100%といった知識を、子どもたちに“自分の生活”へ落とし込んでもらう構成となっています。
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「多くの子どもたちから『このギョーザ家で食べている!』などの反応がありました。私たちが想像する以上に、商品パッケージやキャラクターの『あじペンⓇ』が子どもたちに認識されているのは驚きでした。
出前授業というカタチにしたことで、単に言葉や絵だけでは伝わりにくい環境貢献への取り組み内容をスライドと動画でわかりやすく伝えられる形にすることができました。子どもたちの反応を見ても、しっかりと伝わったと感じることができました。」
3.「食品ロス削減・資源化率100%」への子どもたちの反応は?
授業後の子どもたちへのアンケートでも、味の素冷凍食品様が伝えたい取り組み内容についての理解促進が伺える結果となりました。また、子どもたちから家庭への共有を通じたブランディング効果にも期待が持てたといえます。
(出前授業を受けた子どもたちへのアンケートより)
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食品ロスの学びに関しては、現状に対して「驚いた」という回答がとても多くありました。食品ロスを数値的にわかりやすく伝えたことで、子どもたちの自分ゴトとなり、食品ロスの現状に対して素直な感想が見られました。
「授業内のワーク時には、外食時や給食、家庭での食事など、身近に感じやすいシーンを通して、単にゴミを減らすということだけでなく、好き嫌いに関わる食べ物の話にも触れました。特に給食に関する話題は関心が高く、『嫌いな食べ物を減らすことが食品ロス削減にもつながる』ということについて、子どもたちは想像以上によく考えてくれていると感じました」
(出前授業を受けた子どもたちへのアンケートより)
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「たくさんの子どもたちが、『自分の生活でできること』を考えてくれたことが伝わってきて嬉しかったですね。1度きり45分間の授業ですが、食品ロスに真剣に向き合い、取り組んで考える機会になったと思います。アンケートでは『家族に学んだことを話したい』という回答も多くありました。
子どもたちを通じて、味の素冷凍食品の環境に対する取り組みが家庭に伝わっていく流れは、ブランディング観点でも非常に意味のあることですし、学んだことを自分で理解し、誰かに共有したいという気持ちを引き出せるのは出前授業の強みだと感じます。」
4.想定外だった社内からの反響
今回の出前授業のターゲットは、味の素冷凍食品様にとっては一般生活者である子どもたちでした。しかし、このプロジェクトに関わった社員や、工場の従業員など、社内からも小さくない反響が寄せられたといいます。
「私自身も出前授業の講師として、実際に子どもたちの前に立ちました。今回の経験から、子どもたちに私たちの取り組みを伝えることの大切さを強く感じましたし、自分にとっても貴重な経験となりました。
また、群馬の工場がある地域で行った授業では、従業員のお子さんが授業に参加していたケースや、地元メディアに取り上げられることもありました。工場で働く従業員にとって、自分たちの姿や取り組みが子どもたちに伝わることは大きな喜びです。
社員自らが講師を経験するという活動が社内でも評価されていますし、今後も、社内に向けて授業の意味や意義をしっかりと伝えるとともに、社内広報を通じて講師を選抜するなど、エンゲージメント向上のきっかけにもしたいと考えています。」
5.DNPへの期待
「想定外の反響の一方で、マスメディアやSNS等を通じた情報発信に比べて、出前授業がもたらすブランディング効果のリーチ範囲には、限界があることも事実です。しかし、私たちは、『社員が自社を誇りに思うこと』『自社の取り組みへの理解を深めること』の大切さを認識し、今後も出前授業を継続していきたいと考えています。サステナビリティの取り組みは環境の話だけに留まりません。より大きな視点でいえば、会社経営全体を持続可能にする取り組みが求められているといえるでしょう。当社としては、生産者としての責任感を持ち、既存の取り組みをさらに可視化する必要があると感じています。2026年のCO2排出量測定などのテーマも視野に入れる必要がありますし、目標数値を宣言して取り組むといった姿勢も発信していかなければなりません。
DNPさんには、出前授業の継続はもちろんのこと、幅広いソリューションを生かした情報発信・ブランディングへのサポートを、今後も期待しています!」
本プロジェクトでは、DNPは出前授業企画構成(台本やスライド)、ノート型媒体の企画制作(FREE NOTE)、学校交渉を受託しました。ケースにより、授業の企画構成のみや学校交渉のみなどお客様の課題に合わせた形で対応することが可能です。