株式会社ジェイアール東日本物流様

JR東日本グループの強みを活かした生活者視点のサービス共創プロジェクト

株式会社ジェイアール東日本物流様(以下、JR物流様)とDNPは「JR東日本グループの強みを活かしてヒトを豊かにするサービスを創出する」をテーマに生活者向けのサービス共創プロジェクトを実施しました。本プロジェクトの実施プロセスと工夫したポイントについてご紹介します。(2024年8月時点の情報です)

実施プロセス

STEP1: 体験アイデアの種の発想

まず、今回のテーマである「ヒトを豊かにする」ためのサービスアイデアを幅広く発想するために、ワークショップの準備段階で生成AIを活用し、「ヒトが豊かさを感じる瞬間」を大量に言語化しました。言語化した中で文言を厳選し、30枚の「豊かさヒントカード」を作成しました。例えば「新しいことに挑戦できること」、「親しい人とゆっくりとした時間を過ごせること」など、人が豊かだと感じる瞬間をカードにしました。

ワークショップ当日はこの豊かさヒントカードを使い、生活者視点で体験アイデアの種を70個作成し、サービスコンセプトの起点をつくりました。

アイデア発想ワークの様子

豊かさヒントカードを使ったアイデアの種発想手法

STEP2: 生活者にとっての理想の体験設計

70個の体験アイデアの種を作成した後は、これらを評価し、検討を先に進める3つを選別しました。評価の軸は、サービスの新規性や社内リソースの活用具合、メンバーの意思など複数の軸を用意しました。次はその絞り込んだ3つをサービスコンセプトに落とし込むためにカスタマージャーニーマップとブループリントを使って、生活者にとっての理想のサービス体験と、その体験を実現するために必要となるシステムや仕組みを検討しました。
検討結果をまとめて、最終的に3つのサービスコンセプトを立案しました。

生活者の体験設計の様子

STEP3:ビジネスモデル、PoC計画立案

最後のステップでは、構想した3つのサービスコンセプトのビジネスモデルとPoC計画について議論しました。改めてJRグループとしての強みは何かを言語化し、強みを活かしたビジネスモデルや何を最初に検証しないといけないか、どのような方法でPoCを実施すべきかなどをコアメンバーで議論しました。

プロジェクト進行における3つの工夫ポイント

今回のプロジェクトでは、サービスデザイン視点で下記の3つの工夫を入れて進行しました。

工夫1: プロジェクト要件定義時にサービス推進に必要な項目を洗い出して議論開始

当然のことながら、企業でサービスを検討するにあたり、生活者や顧客の体験設計にとどまらず、ビジネス性、技術実現性など、非常に多くの視点を持つ必要があります。検討が必要な視点も企業ごとに異なるため、すれ違いが起こらないように、プロジェクトの最初にサービスを検討する段階で「何を検討しないといけないか」その大枠を決め、やるべきことをすべて洗い出し、プロジェクトの実践内容を決めていきました。

工夫2:生成AIを使ったアイデア発想のためのヒントカード作成

プロセスのSTEP1の紹介でも触れた通り、アイデア発想の起点として生成AIを使って「豊かさヒントカード」を作成しました。生成AIを使った理由としては、参加者だけで集まって豊かさを言語化した際に無意識のバイアスが働いてカードの内容が偏る可能性を考慮し、バイアスの影響を排除する必要がありました。実際に生成AIを使って言語化してく際に参加者の視点だけではたどり着けなそうな言語化もいくつかありました。今回の最初のステップはなるべく幅広いアイデアを発散することが目的だったので、アイデアの幅広さを求める際には生成AIを活用できるなという学びがありました。

「豊かさヒントカード」の例

工夫3:明確な乗っかり合いアイデアフォーマット

サービスデザイン・ラボのワークショップでは他人が考えたアイデアの「いいな」と思ったポイントに乗っかる形でさらに発展的なアイデアを共創していくというスタイルで実践しています。ただ、「このアイデアの良いポイントに乗っかっていく」という行為はワークショップに慣れていない参加者の方は意識しないと自然にはできないことも多いため、今回のワークショップではアイデア発想時の記入フォーマットを工夫し、参加者の中で自然な乗っかり合いが起こるように工夫しました。

ワークショップで使ったフォーマット

上記フォーマットを用いて、次のような3ステップで実践しました。
①左側に生活者を豊かにするアイデアを「豊かさヒントカード」を使って発想
②このシートを隣の人に渡す
③受け取った人は誰かの書いたアイデアの良いところを見つけ、良いところを伸ばすアイデアをシートの右側に記載
このように明確に他人のアイデアの良いところに乗っかり合い、共創でアイデアを発展させるプロセスで実践しました。

まとめ

このような工夫をしながら、生活者向けサービスの検討を実施しました。今回の学びとして生成AIを活用してワークショップに必要なヒントの情報を収集していくことは、バイアスを排除して幅広く探索していくステップで活用できそうだと感じました。、今後の他プロジェクトにも活かしていきます。

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DNPではサービスデザイン・ラボという組織を編成し、人起点で商品やサービスの新たな体験価値を創造し、
それを継続的に提供するための組織や仕組みも含めてデザインする方法論「サービスデザイン」を推進しています。

※サービスデザイン・ラボは、DNP大日本印刷の登録商標です。

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