宮城県 保健福祉部 障害福祉課様

学生と障がい者アーティストとの共創ワークショップを通じた相互理解促進

宮城県の「障害者差別解消法や共生社会づくり条例」の認知を高めるためサービスデザイン・ラボⓇやDNPの仙台事業所メンバーが中心となって、宮城県内の学生と障がい者アーティスト参加型のキャッチコピー作成ワークショップを実施しました。そのキャッチコピーは障がい者アート展示ブースにも活用し、他にもオンラインのイベント企画・運営など包括的に取り組みました。(2024年3月時点の情報です)

背景・目的

宮城県では、「障害者差別解消法や共生社会づくり条例」の認知度が低い特に若年層(10代~30代)に対する理解促進を図りたいという課題がありました。そこで宮城県は「障害者アート作品を通じた相互理解促進業務(以下、本事業)」を公募し、DNPがデザインシンキングを軸にして、学生参加型のセミナーやワークショップを通して、障がいを理由とする差別の払拭や宮城県のより良い共生社会づくり、未来へつなぐ「相互理解」を目的にした企画運営を提案し、受託しました。

キャッチコピーを考える第一段階、決定・発表する第二段階、HPやSNS、その他発信する第三段階、活動への興味拡大する第四段階を説明している画像

全体の狙い

本事業の目的は、下記3点です。
・若年層と障がい者アーティストとの交流を通して、障がい者の表現や生き方に触れ、互いの価値観や想いを共有すること。
・若年層が本事業である障がい者アート展示ブースのキャッチコピーを考える機会を通じて、障がいや共生社会について自分ゴト化すること。
・本事業である障がい者アート展示ブースへの来訪ターゲットである若年層に向けて、学生がメッセンジャーとなることで、社会全体の共生意識を高めること。

これらの目的を達成できるようワークショップの設計を工夫しました。

プロセス

デザインシンキングアンバサダーを表現しているロゴマークの画像

今回のワークショップでは、サービスデザイン・ラボのメンバーと一緒に、DNPの仙台事業所の「デザインシンキングアンバサダー」がプログラム設計とファシリテーションに関わりました。

ポイント


●グループワークで出た成果は全員の成果として共有し合いながら、乗っかり合ってアイデアを発展させる“共創”や、自分自身の経験談や気づきを起点にする“生活者視点”のマインドをワークに取り入れました。

●ワークショップに障がい者アーティストも混ざり合い、目的に向かった共同作業を行うことで、直接的な対話が促されました。

Step1 インプット:特定非営利活動法人エイブル・アート・ジャパン様によるセミナー

宮城県で活動している障がい者アートの支援団体であるエイブル・アート・ジャパン様から、活動概要や背景、障がい者アーティスト・作品の紹介、障がい者理解促進の重要性などについて講演いただきました。講演内容での、“気づきや新たな発見”はStep2のキャッチコピー作成ワークショップの糧になります。
また、セミナーは宮城県内の企業もオンラインで視聴され、広く発信されました。

Step2 ワーク:若年層の心が動くキャッチコピー作成ワークショップ

講演やアート作品の実物を見た感想や印象を共有しスタート。本事業のキャッチコピーを考えるワークを行いました。
「障がい/障がい者/障がい者アート」に対する今までのイメージと新たなイメージとのギャップをもとに、キャッチコピーを考えていきます。「形容詞ダイブ」というテクニックを使い、イメージを一歩深掘りするステップを経て、全部で106点のキャッチコピー案を作成しました。

形容詞ダイブというツールを使ったワークショップの付箋の画像

セミナーやワークショップの様子を表現した写真

セミナー&ワークショップの様子

成果

学生の参加者は、障がい者アート作品に触れることで、障がい者の表現や生き方に対する理解や興味を深め、さらなる学習意欲を高めることができました。アンケートでは、セミナーやワークショップに高い評価を得るとともに、「障がい/障がい者/障がい者アート」に対する印象や考え方が変わったという感想が多く寄せられました。

学生からのアンケート(一部)


■セミナーを通した意識や興味の変化
・障がい者アートを通して、(障がいに対して)今の私たちが持っていた印象からセミナーを受けてポジティブな印象へと考え方が変わった。
・自分にも好きな障がい者アーティストがいるので知っているつもりだったが、実際障がいのある方々が置かれている現状など、まだまだ勉強不足な部分が多々あり、非常に勉強になった。
・障がいを持つ方が社会で活躍するためにアート関係の取り組みを学んだが、他の方面では共生社会実現に向けてどのような取り組みがされているのか気になった。

■ワークショップを通した効果
・グループで意見を出し合う楽しさを知れた。
・他の学生たちの多様な意見を聞くことができた。
・キャッチコピーを考えるのは初めてで、うまく案を出せるか不安だったが、段階を追って考えを整理し、適宜手法も学びながら進んだため、楽しくワークショップを行うことができた。

■本事業への効果
・ワークショップを通して障がいのある方に対するイメージがポジティブなものにどんどん変わり、頭も使いましたが晴れやかな気持ちで終えることができた。
・今までは障がいを持つ方や障がい者アートについてあまり知らず、どう接していいかもわかっていなかったため、それが原因で障がいを持つ方を傷つけてしまったらどうしようという怖さからなかなか積極的に関わることができないでいた。しかし、今回いろいろな大学や職種の方、実際に障がい者アートを創作している方と関わり、楽しいと思ったことで、障がいの有無に関係なくもっといろいろな方と関わってみたいと思った。

宮城県のご担当者には、若年層に対する障がい者理解促進/相互理解の施策として、デザインシンキングを活用して学生と障がいのある方がまじわって共創することの有効性を感じていただき、継続活動への評価をいただきました。

宮城県内の学生が考え、票を集めたキャッチコピー案は、2023年9月に開催されたSENDAI SDGsWeek 2023イベントの中の障がい者アート展示ブースや、本事業の広報に広く活用され、若年層を含めた多くの県民が会場に訪れ、県民の認知につなげることができました。

SDGsウィークのイベント全体と、障害者アートブースのイベント会場の様子写真

障がい者アート展示ブースが設置されたSDGsWeekの様子

デザインシンキングは、ユーザーの視点に立って、課題を発見し、解決策を共創するための有効な思考法です。DNPは、デザインシンキングを活用して、お客様や社会の課題に挑戦し、価値を創出していきます。

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