柏の葉アーバンデザインセンター様、国立研究開発法人産業技術総合研究所様

行動デザインのDNP独自メソッドで「脱炭素×まちづくり」を住民・自治体と検討

「脱炭素のまちづくり」をテーマに、柏の葉キャンパス駅周辺の住民参加型で、DNPのナッジを使った行動デザインを適用したワークショップを2023年12月2日(土)に実施。その成果を12月16日(土)の「柏の葉エコWEEKEND」にて発表しました。 (2024年2月時点の情報です)

取り組みの背景

柏の葉アーバンデザインセンター(以下 UDCK)様や国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下 産総研)様が、柏の葉キャンパスで取り組む市民共創の場「みんなのまちづくりスタジオ」で開催するワークショップに、DNPでサービスデザインの研究開発と実践に取り組むサービスデザイン・ラボ®(以下SDL)もプログラムを提供しました。
サービスに関する広範な知識を体系化する、サービス学会をきっかけにSDLと産総研は情報交換を開始。共創できる領域の探索をしている中で、本プロジェクトが始まりました。

今回のワークショップのテーマは「デコ活」(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)。全4回のプログラムで、気候変動や脱炭素の基礎知識の習得、脱炭素の行動目標の設定、まちづくりのアイデア検討の3つのワークショップと環境をテーマとした柏市主催の啓発イベント「柏の葉エコWEEKEND」での発表を行いました。
このうち第3回のワークショップをSDLが担当し、行動デザインを活用して「どうすれば脱炭素につながる行動を自然とできるようになるか」を市民共創型で考えました。
行動デザインは、“やらなければいけないと思いながら、なかなかできないこと”について、製品やサービス、環境のデザインを通じて、生活者の行動変容を促す手法です。DNPは慶應義塾大学と共同で、誰もが簡単に行動デザインの考え方を取り入れてアイデアを発想できるよう、プロセスの体系化とツールを開発。今回のワークショップでは、このプロセスと、行動を後押しする要素(ナッジ)が書かれた「DNPナッジカード™」を活用してアイデアを発想しました。

ワークショップの様子

ナッジを使った行動デザイン ワークショップ内容

SDLが担当した第3回のワークショップのゴールは「脱炭素まちづくりのアクションを思わずしたくなるアイデアを考える」ことです。
(1)脱炭素につながるアクションとターゲットの設定
(2)ターゲットとなる生活者がその行動をしない理由(行動障壁)の分析
(3)ナッジの考え方を活かした、行動を起こしたくなる施策アイデアの発想
(4)街の資産ヒントカードを使ったアイデアのブラッシュアップ
の4ステップで進めました。

(1) 脱炭素につながるアクションとターゲットの設定
第2回のワークショップで参加者が出した脱炭素につながる行動目標(誰がどんなことをしたら脱炭素につながるか)のリストから、より効果的なものを、柏市の人口ピラミッドから算出した行動を起こせる人数と環境省提供のCO2削減量を紐づけて選定。ターゲット像もペルソナシートを作って詳細化しました。

(2) ターゲットとなる生活者がその行動をしない理由(行動障壁)の分析
ターゲットが脱炭素につながる行動をなぜやらないのか、CREATEファネルというツールを使ってその理由を洗い出しました。

(3) ナッジの考え方を活かした、行動を起こしたくなる施策のアイデアの発想
世の中にあるナッジを発想しやすいようにカード化したオリジナルツール「DNPナッジカード™」を使い、行動障壁を突破するアイデアを発想しました。

(4) 街の資産ヒントカードを使ったアイデアのブラッシュアップ
柏の葉にある公共空間や設備をカード化。(3)で出たアイデアと掛け合わせることで、どのような場所で脱炭素につながる行動を実現していくのか、アイデアを具体化しました。

ワークショップの結果83件の具体的な行動のアイデアが生まれました。その中で特に二酸化炭素の排出量削減と行動変容につながる4件を抽出し、発表に向けてブラッシュアップしました。

「柏の葉エコWEEKEND」での成果発表

最終プログラムである「柏の葉エコWEEKEND」の中で実施された「柏の葉脱炭素フォーラム」で、ワークショップで生み出した4つのアイデアについて、参加した市民が発表しました。
・環境保全活動チーム「ごみ捨てを街全体で楽しくデザインする!」
・3Rチーム「柏の葉をリペア文化のまちへ」
・サステナブルファッションチーム「リペアオフィス柏の葉」
・食品ロスチーム「炊き出し横丁」
これらの提案に対して柏市のまちづくりの関係者から、「ゴミ拾いもリユースもまちのコミュニケーションの活性化になる。普段自分たちで考える時とは違う視点を得られた」「ぜひ実装していきたい」「“ナッジ”で考えることの効果を感じた」などのコメントが寄せられました。

〔参考: 環境保全活動チームのアイデアについて〕
成果発表したアイデアのうち、環境保全活動チーム「ごみ捨てを街全体で楽しくデザインする!」のアイデアの内容をご紹介します。

○ターゲットとアクション:地域人口分布のボリューム層である柏の葉に住むワーキングママ(親子)が、街なかのゴミを拾う。

ターゲットとなるペルソナ

○行動障壁:「他人が捨てたものを触りたくない」「捨てるゴミ箱がない」「私がやらなくても誰かがやってくれるだろう」などのゴミを拾うことへの行動障壁を特定。
○活用したナッジ:「やりたいこと」と「やらなければいけないこと」を組み合わせると実行したくなる「誘惑のバンドル」。
○散歩のスポットでゴミ拾い用のトングが気軽にレンタルできる「エコアシストトング」をキーとしたアイデアを創出。拾ったゴミの量や種類を街頭サイネージなどで発信、拾った量に応じた貢献度合いの可視化やプレゼント特典、街の見守りカメラと連動してゴミが多い場所を散歩するルートの自動生成など、公共設備との組合せによって、街全体で持続的に取り組める企画としました。

エコアシストトングのアイデア

○このアイデアを通して街なかのゴミを収集し、分別処理を正しく行うことで、一人当たり年間約4kg(家庭から出る容器包装プラスチックと同じ量を全て分別してリサイクルした場合)のCO2削減量が期待できます
*参考資料

今後の展開

今回、柏の葉に暮らす住民自身が「自分たちがやらなければいけないこと」を、ワークショップを通じて具現化し、行動変容につなげることをめざしました。実際に柏の葉で生活している住民だからこそ感じる課題感や場所の知識がワークに反映されることで、より共感性が高く、実装につながりやすいアイデアを創出することができました。また、産総研様、UDCK様が持つ「場」や「資産」と、SDLの持つ行動デザインのノウハウを組み合わせて社会課題に取り組むモデルケースともなりました。
今後、柏の葉の街でプロトタイピングを実施するなど、社会実装をめざした活動につなげていく予定です。

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