サービスデザイン国際カンファレンスでの論文発表
ビジネス課題に適合したサービスデザイン手法の研究開発
「ビジョン提唱型サービスデザインのためのデザインドリブン・サービスイノベーション(DDSI)手法」をService Design and Innovation Conference 2016(ServDes.2016)で発表しました。(2016年6月時点の情報です)
取組み概要
サービスデザイン・ラボⓇ(SDL)では、サービスのイノベーションを生み出すため、さまざまなビジネス形態、ビジネス課題に適合したサービスデザイン手法の研究開発を進めています。今回は、慶應義塾大学武山研究室と共同開発した「ビジョン提唱型サービスデザインのためのデザインドリブン・サービスイノベーション(DDSI)手法」の研究成果を発表するため、2016年5月24日~26日にオールボー大学(デンマーク・コペンハーゲン)で開催されたServDes.2016に参加してきました。
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ServDes.2016(Service Design & Innovation Conference)について
ServDes.2016は、2009年に設立されたサービスデザインの国際学会です。多数のデザインコンサルティングや研究機関が拠点にしている北欧で毎回開催されます。
第5回のテーマは「Geographies」。デザイン思考やサービス・ドミナント・ロジック、参加型デザイン、サービス・イノベーション、ソーシャル・イノベーション等、拡大したサービスデザインのテリトリーをいま一度俯瞰してみようという内容です。
企業や大学などの研究機関からの研究成果発表や事例紹介、パネルディスカッションに加え、デンマークの国際デザインセンター「Danish Design Centre:DDC」や政府のイノベーションデザインユニット「MINDLAB」の見学ツアーなども行われました。
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発表内容
「ビジョン提唱型サービスデザインのためのデザインドリブン・サービスイノベーション(DDSI)手法」
事業を取り巻く社会環境の変化に伴い、各社イノベーションへの期待が高まっています。しかし、今対象にしている顧客やマーケットを見ても答えを見つけるのは困難で、アプローチ方法に限界があると我々SDLは考えています。
今回研究開発した手法は、既存事業の顧客ニーズからではなく、社会変動から今後重要性が増す新たな課題領域に注目して、生活者の価値観変化を構造化し、生活革新を引き起こす事業ビジョンを創出する手法です。
デザイン・ドリブン・イノベーション(※)の考え方を取り入れており、有識者との対話や解釈、アナロジー発想の工夫を取り入れています。
本手法で創出できる事業ビジョンは、新市場を切り開くような新たな文化になり得ると考えています。
※デザイン・ドリブン・イノベーションとは、ロベルト ベルガンティ著の『デザイン・ドリブン・イノベーション』で提唱されているデザインマネジメントの考え方です。「技術」に対して「意味」の急進的イノベーションを指しています。
<手法の特長>
1. 社会変動をふまえて既存事業をリフレーミング
2. 文脈融合技法で生活革新サービスのビジョンを形成
3. ビジョン主導のサービスデザインで領域再編の事業を創出
<DDSIプロセス概要
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具体的に「スーパーマーケット」を仮想テーマとして実験した結果も発表し、手法の新規性と具体的なアウトプットの魅力を報告しました。
学会発表の反応・所感
質疑応答やディスカッションを通して印象に残った会場からのコメントは
「現在、いわゆる一握りのデザイナーや天才的な経営者が事業ビジョンを創っているが、本手法は専門知識を持った多様なメンバーがチームとなって共創するためのプロセス・ツールとして体系化しているところが興味深い。」というものでした。これらの反応から、共創型の事業ビジョン創出手法として新規性があるということの手ごたえをつかむことができました。
また、実験のために創出した「スーパーマーケット」の事業ビジョンに関して、「実現していないのはなぜ?ユニークなので実行した方が良い」という意見をもらい、手法で生み出したアウトプットの魅力を確認することもできました。
ビジネスにすぐ展開できる研究成果は少ないと感じましたが、地に足ついたアカデミックな内容が多く、研究活動をしている我々SDLにとってはすべて刺激的でした。
特に「参加型デザインの4のタイプ」「製造業にとってのサービス・ドミナント・ロジックへの変革ステージ」「企業が保有しているデータからビジネスモデルをデザインする手法」「ユーザー理解のためのボードゲームツール」が興味深く、すぐさまビジネスへの適用を検討してみたいと思いました。
また、デザインコンサルティングのDesignitが主催したワークショップにも参加し、国境や職種を越えたメンバーでのアイディエーションは貴重な体験でした。
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それを継続的に提供するための組織や仕組みも含めてデザインする方法論「サービスデザイン」を推進しています。
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