株式会社 明電舎 様
企業イメージの一新に挑んだ大規模コーポレートサイトの改修
プロジェクトの成否を決めたのは、“あるべき姿”の再構築
発電・変電などのエネルギーシステム、水処理システム、情報通信システム、産業システムなどの開発、製造、販売、サービスを手がける株式会社 明電舎(以下、明電舎)様 。DNPは、明電舎様のコーポレートサイトリニューアルにあたり、同社Webサイトのあるべき姿を定義するとともに、CMS「NOREN」を活用したサイト構築をご支援しました。
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ご質問、ご相談など、お気軽にお問合わせください。
同プロジェクトをリードした明電舎コーポレートコミュニケーション推進部 宣伝・情報管理課の山口恒久様に、コーポレートサイトリニューアルの背景や成果などを伺いました。DNPからは、プロジェクトマネジメントを担当した株式会社DNPコミュニケーションデザイン(以下、DCD)の清水久美子が、このインタビューに参加しています。
※所属・肩書などは、2023年12月(本記事制作時)のものです。
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企業イメージの一新をめざしたリニューアルプロジェクト
——明電舎様がコーポレートサイトのリニューアルに至った背景をお聞かせください。
山口様: 前回、コーポレートサイトをリニューアルしたのが2015年でした。それから7年経ち、デザインを含めて古い印象を受けるようになってきたというのが主な理由です。スマートフォン対応を含めたレスポンシブWebデザインの導入、検索エンジンへの対応など技術的な部分のバージョンアップも必要でした。
また、2015年の明電舎コーポレートサイトをかわきりに、国内外のグループ会社計33社のサイトリニューアルを行い、約5年かけて一通り完了しました。2020年頃から改めて本社コーポレートサイトのリニューアルに向けた動きが始まり、2022年4月に公開したという流れです。
当社はインフラ関連設備の開発・製造を担っていることもあり「堅い」「保守的」といったイメージを持たれているケースが多く、今までの明電舎のイメージを一新したいと考えました。そこで、創業120年以上の歴史や技術に対する信頼感を大切にしながらも、「未来志向の企業である」ことを幅広いステークホルダーに向けて発信できるコーポレートサイトをめざしました。
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「NOREN」の制作実績が豊富なDNPに依頼。
——リニューアルのパートナーを選定する際に重視したポイントを教えてください。
山口様: あらゆるステークホルダーに対して良い意味で明電舎のイメージを塗り替えたいという狙いがあったため、あえてこれまで当社とお付き合いがなかった新しい企業にコーポレートサイトの制作をお願いしたいと考えました。
パートナーとなっていただく企業に求めたのは、まずBtoBのサイト構築実績が豊富であること。また、当社の既存サイトがCMS「NOREN」を利用しており、その資産を引き継ぎたかったため、「NOREN」を活用したサイト構築実績がある企業を条件としました。
そこで、「NOREN」を開発している株式会社アシスト様に相談し、「NOREN」の構築パートナー企業を複数紹介してもらいました。その中の1社がDNPさんです。コーポレートサイトの制作実績や、「NOREN」で構築しているDNPのコーポレートサイトを拝見したところ非常によくできていたので、当社サイトのリニューアル支援を依頼しました。
また、特定のステークホルダーではなく全方位志向で訴求したいという点からも、多様な事業を通じて数万社の取引実績があるDNPさんのグループ力に期待しました。
DNPはコンサルティング領域に注力、迅速な提案を可能に。
——明電舎様からのご相談を受けて、DNPではどのような提案をしたのでしょうか?
清水: コーポレートサイトは、ビジネスの成果において重要な役割を果たします。ビジネスに貢献するWebサイトを構築するためには、どのような手順を踏むべきかを提案しました。
また、「NOREN」など複数のシステムを利用している状況をふまえ、迅速な対応ができる体制を整えることも重要と考え、以前から明電舎様のサイト構築・運営に携わってきた制作会社さんに今回のリニューアルにも携わっていただくことを提案しました。既存システムの調査・分析といったフェーズを省いて迅速かつ費用を抑えたリニューアルを実現するとともに、サイトリニューアル後、スムーズにサイト運用やシステム保守が可能になるというメリットを明電舎様へお伝えし、体制をご検討いただきました。
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企業側、訪問者側の目的を整理し、サイトのあるべき姿を定義。
——リニューアルの方向性を提案するにあたり、どのように情報の整理や方針整理を行ったのでしょうか?
清水: 明電舎様のコーポレートサイトは、非常に大規模で数千ページにおよびます。リニューアルの希望納期に合わせるためには、一つひとつのページを詳細に見直すのではなく、優先順位をつけて取り組む必要があり、注力するページとそうではないページに分別しました。
次に行ったのが、あるべき姿の検討です。コーポレートサイトは、企業情報やIR情報、サステナビリティ、採用情報、製品情報など、さまざまな情報を総合的に提供するプラットフォームです。関係者間で共通の理解を持ち、サイトのリニューアルや運用に取り組むためには、Webサイトの役割や目的を明確にし、ユーザー視点からサイト設計や施策を検討することが欠かせません。そこで山口様をはじめ皆様にご協力いただき、明電舎様の各部門の方針・要望・課題についてアンケートや直接ヒアリング、内部ヒアリングなどを実施し、そこで得られた現場の意見をふまえ、コーポレートサイトとしてのあるべき姿を提案しました。
明電舎様以外の明電グループの国内外のグループ会社のWebサイトの役割や構造、ガバナンスについても見直しています。今後、順次グループ会社のサイト構築を進めていければと考えています。
「明電舎が何をしている会社か」がすぐにわかるコンテンツを。
——DNPからの提案をふまえ、明電舎様側ではどのようにリニューアルの方向性を決めていったのですか?
山口様: 今回のリニューアルにあたって、「明電舎が何をしている会社か」がすぐにわかるように表現したいと考えました。そこで重要視したのが、ブランディングイメージの発信と、社内向けのインナーブランディングです。
当社の社員が明電舎のサイトを見る機会は少なく、自身が関わっている製品やサービスの情報については知っているものの、多様な事業を展開しているがゆえに会社全体の情報を知っている人は少ないといえます。そうしたインナー向けの課題もふまえ、「明電舎が何をしている会社か」がすぐにわかるようなコーポレートサイトにしたいと考えました。
こうした取り組みの1つとして、トップページや「明電舎を知る」のページで当社の企業広告を紹介するコンテンツを設けました。
なかでもYouTubeで配信しているWebムービー「電気よ、動詞になれ。」ピクセルアート篇は、掲載開始当初、その個性的な内容に社内では賛否両論ありましたが、外部の反響は大きく、200万回を超える再生数があり、「YouTube Works Awards Japan 2023」でグランプリを受賞。こうしたコンテンツを通じて新たに明電舎に興味を持つ人が増えてくれることを期待しています。
また、製品・サービス情報のページについては、従来の情報を活かすことでスケジュールや予算の圧縮を図りましたが、リニューアルしたページとシームレスに連携させるために階層構造をグローバルメニューに加えるなど、DNPさんとのやり取りを通じてカスタマイズしていった部分もあります。
専門スキルを持ったメンバーを集め、細やかに支援。
——円滑にプロジェクトを進めるために、DNP側ではどのような工夫をしましたか?
清水: 既存資産である「NOREN」を活かしたいという明電舎様の希望、Webサイトにおけるコミュニケーション設計の検討の必要性などを鑑みて、専門性の高いメンバーを集めました。主にプロジェクトを担当したのはプロジェクトマネジメントを担当した私と、プランニング・情報設計を担当したディレクター、「NOREN」のエキスパートであるシステム担当の3名です。また、上記3名の下に連なる多数のスタッフの意見も集約するとともに、それぞれの専門スキルを活かして価値あるご提案をできるよう心がけました。
山口様: コロナ禍での進行だったため、DNPさんとの議論はオンラインミーティングでのやり取りが主でした。その過程で、DNPの皆さんに工場(沼津事業所)を直接見学してもらうなど、当社の現状を理解いただくための協力は積極的に行いました。
印象的だったのは、工場で実際に製品を見てもらった際、DNPさんのディレクターの方から「つくっているものが大きい」という言葉が出たこと。私たちには当たり前に見えることが、外部の視点から見ると新鮮でインパクトがあるものに映る。そうした視点が提案の随所に活かされていると感じました。明電舎のイメージをどう刷新するかという点において、非常に意義深かったと思います。
——逆に、大変だったことはありますか?
山口様: 今回のリニューアルでは、その業務に専従で取り組むことができず、発注側としてやるべきことに時間を確保する点が大変でした。ただ、この種のプロジェクトでは「まず、こちらが動かないといけない」という経験則があったので、期限を守ってフィードバックをする、無駄なミーティングと必要なミーティングを整理するなど、上流工程のDNPさん、下流工程の制作会社さんの双方が動きやすい環境を提供できるように最大限の努力をしました。
そうした苦労は、大勢のスタッフに関わっていただいたDNPさん内部にもあったかと想像しますが、私たちに見えるフロント部分は窓口である清水さん、プランニングディレクターの方、システム担当の方の3名に集約しつつ、迅速・的確に対応していただきました。特に、すべての交通整理やアサイン、細かなヌケモレなどをきっちりフォローしていただいた清水さんの果たした役割は、非常に大きかったと感じています。
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リニューアルプロジェクトの現在地と今後
——リニューアルプロジェクトの現在地と今後の予定を教えてください。
山口様: 2023年4月に本社の日本語サイトが公開。11月末に英語サイトが公開となりました。今後、国内16社、海外17社あるグループ会社のサイトを、今回実施した本社サイトリニューアルのコンセプトをふまえて、順次リニューアルしていく予定です。
各グループ会社のサイトリニューアルは、私を含めて4人が在籍する情報管理チームで進めていきます。基本的には本社サイトのガバナンスと同じ思想で展開していきますが、会社によってその目的は異なります。一連のリニューアルを通してある程度、DNPさんからノウハウを教えていただいたのですが、全30社以上におよぶ企業それぞれのあるべき姿から設計していくのは膨大な作業です。できる範囲のことは自社で対応しつつ、サイトの目的整理などの部分は引き続きDNPさんにご相談しながら進めていければと考えています。
——リニューアルプロジェクト全体を振り返って総括をお願いします。
山口様: 従来のサイトではトップページに情報が少なく、下層ページの情報を更新してもトップページではわからない構造となっていました。リニューアル後は、トップページにピックアップのエリアを設けたことで下層ページの更新情報がひと目でわかるようにしました。ちょうど、書店の平積み棚のようなイメージですね。
DNPさんからはこうしたWebサイトの最新のトレンドやUIを含めてご提案いただき、当初の目的だった「明電舎がどんな会社か」や「明電舎の今」がわかりやすいコーポレートサイトに仕上がりました。ここまでの成果にはとても満足しています。
清水: ユーザー視点の改善については、解像度を高めるためにペルソナを設定し、各ペルソナの文脈にそったシナリオから必要なコンテンツの検討や動線設計を行いました。山口様にご評価いただいた部分は、ここでDNP社内でも幅広く意見をつのり、さまざまな視点を盛り込めたことが大きかった気がします。多様な専門性をもつ同僚たちに感謝したいです。
戦略的なWebサイト活用が必要不可欠な時代
——最後にコーポレートサイトのリニューアルを検討している企業に向けてメッセージをお願いします。
山口様: 多くの企業で「コーポレートサイトの予算が取れない」「費用対効果を示しづらい」といった課題があると認識しています。当社も予算の確保には苦戦しました。しかし個人的に、コーポレートサイトは企業にとってなくてはならないオウンドメディアであり、ここでの投資は最優先といっても過言ではない重要課題ととらえています。情報を発信する側の視点ではなく、「企業の情報を欲しているステークホルダーがどう感じるのか?」という視点で考えるよう働きかければ、社内の意思統一も進むのではないでしょうか。
清水: かつてはコーポレートサイトが存在していること自体に意味がありましたが、近年はいかに戦略的に活用していくかが問われます。多様なステークホルダーに情報発信するツールとして企業経営に直結するメディアであること、それゆえに、構築ないしはリニューアルをする際は、経営部門から現場まで意識を統一して取り組むべきであることをご理解いただければと思います。
とはいえ、そうした道筋を立てる作業は、サイト構築・改修部門だけでは負荷が高いのも事実です。その部分を外部から下支えするのが、DNPのコンサル業務の提供価値といえます。
その意味で明電舎様は、山口様をはじめ皆様に理想的なご対応をいただき、私たちが動きやすい環境を作っていただけたことに大変感謝しております。ここまでの取り組みでDNP側がリテラシーやノウハウを蓄積できた部分も大きいので、引き続きさまざまなかたちでご支援していければと考えております。
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株式会社 明電舎 様
鉄道、発電所、浄水場、病院、大学、工場、ビル、放送施設、自動車といった社会・産業インフラに関わるさまざまな機器の開発、製造、設置からメンテナンスまでを手がけ、2022年に創業125年を迎えた重電機器メーカー。
社名: 株式会社 明電舎
設立: 1917年6月1日(創業1897年12月22日)
本社: 〒141-6029 東京都品川区大崎2丁目1番1号 ThinkPark Tower
資本金: 170億7000万円(2023年3月末)
従業員数: 連結9,816名 単独4,039名(2023年3月末)
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