株式会社アイセイ薬局 様

LINEチラシ導入によっておくすり予約サービスの新規会員獲得を狙う。LINE公式アカウントへの集客でも効果を実感

調剤薬局チェーンを展開する株式会社アイセイ薬局(以下アイセイ薬局)では、2021年10月からLINEチラシを導入し、独自サービスの認知拡大やLINE公式アカウントへの友だち追加につなげています。同社でデジタルマーケティングを担当する庭野氏に、LINEチラシ導入の背景、今後の展望などについて話を伺いました。

新サービスの認知拡大、外部誘引施策として活用

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株式会社アイセイ薬局 事業本部提携推進部係長 庭野 大祐氏

はじめに、御社のデジタルマーケティング戦略や活用されているツールについてお聞かせください。

庭野: 施策としては大きく2つあります。まず、すでにアイセイ薬局をご利用の患者さま向けの施策として、全国の400近いアイセイ薬局グループ店舗内でさまざまなサービスのご案内を実施しています。掲示物をはじめ、薬剤師から直接、チラシやステッカーなど配布物を渡す施策ですね。

もう1つは、“外部施策”として、Webでの広告配信、ポスティング、街頭でのティッシュ配布など、まだアイセイ薬局に来たことがない方々に対してアピールを行っています。

外部施策を具体的にお聞かせください。

庭野: 外部施策としては、「処方箋を持ってきてもらうための施策」に力を入れています。現在、特に注力しているのが「おくすりPASS FAST※1」というおくすり予約サービス(スマートフォンで処方箋を撮影して、薬局に送信するサービス)の認知拡大です。従来は病院やクリニックから紙の処方箋を受け取り、来店時に処方箋を持参していただいてから、お薬を処方する方式が主流でした。これに対して「おくすりPASS FAST」では、来店前に患者様のスマートフォンから処方箋の画像データを薬局に送信してもらうことで先にお薬の準備ができます。薬局内での待ち時間を減らし、スムーズにお薬をお渡しすることを目的としています。もともとは、当社で展開している電子お薬手帳アプリの中の機能の一つだったのですが、ご利用者さまからの評判が非常に良かったため、独立したサービスとしてローンチしました。

このサービスを知ってもらうために、さまざまな外部誘引施策を実施しています。アナログなところでは薬局近隣へのポスティングや、フリーペーパーへの記事掲載、デジタル施策としては、GPSを活用したジオターゲティング広告など、紙・Webを問わず試してみました。こうした試みの中で最終的にたどり着いたのが電子チラシというサービスでした。

アイセイ薬局店舗外観イメージ

圧倒的なユーザー数と世代・性別の偏りがないことが決め手

LINEチラシを検討した時点での課題についてお聞かせください。

庭野: 現在の日本では、調剤薬局の数がコンビニエンスストアを上回っています。(全国の薬局数は2019年末時点で約6万117件※2 コンビニエンスストアは2021年9月時点で5万5949件※3)

これだけたくさんの薬局があると、自分の家の近くにある薬局を把握していない方は大勢いらっしゃいます。そのため、まずは「いかに店舗の存在に気付いてもらうか、知ってもらうか」が課題だと考えました。一般的に、自宅から最も近い薬局を利用する患者様が多いため、店舗を中心とした半径数km圏内にお住まいの方々に認知してもらうことが大切だとも考えていました。

LINEチラシが課題解決に役立つと考えた理由をお聞かせください。

庭野: LINEチラシは「店舗の半径数kmにマイエリア設定を行っているユーザーに対して優先表示することが可能」であり、店舗の近くに住んでいる人にだけ広告が出せるという点が魅力的だと思いました。もう少し具体的な導入の決め手としては、以下3つが挙げられます。

1つ目は「圧倒的なユーザー数」です。8900万人超というユーザーを抱えるLINEは、日本国内において主要なコミュニケーションインフラと考えて良いツールだと思います(LINEユーザー数は2021年9月末時点で8900万人※4)。この圧倒的なユーザー数に対し、効率よくアプローチできることは大きな魅力です。

2つ目は、「年代・性別の偏りがないこと」ですね。LINEチラシは主婦層から高齢層まで幅広い年代が日常的に使用しています。他媒体ではアプローチできるユーザー層に偏りがあることも多いのですが、LINEアカウントを利用するこの媒体では幅広い年代をカバーしており、なおかつ性別による大きな偏りもありません(LINEユーザーは男性約44%、女性約56%※5)。そのため、年齢・性別にかかわらず幅広い層に効率よくアプローチできると考えました。特に、薬局を訪れる患者様はご高齢の方や男性の方も多いので、この層まで情報を届けられることは大きな魅力でした。

3つ目は、「拡張性の高さ」ですね。自社で保持するLINE公式アカウントとの連携をはじめ、各種サービスの紹介ページなど自社メディアへの誘導といったポータル的な利用ができることは大きなメリットです。また、薬局が開催するイベントの情報などをある特定店舗のページだけピンポイントで出せたりと、ほかの広告媒体にはない緻密なセグメント設定で地域密着型の情報提供を実現できることは大きな魅力だと感じています。

LINEチラシを導入するまでの流れについてお聞かせください。

庭野: まずは部署内で企画の方向性を検討し、店舗運営を統括する部門と調整しながら進めていき、社内承認を得ました。その後、全エリアの店舗運営責任者に「LINEチラシ」の本格導入について説明し、対象200店舗の選定に入りました。店舗選定に関しては、エリアの特性や過去のデジタル施策実績などを加味し、比較的効果が期待できそうな店舗を中心に、運営側の責任者と協議しながら決めていきました。

LINEチラシを導入するまで期間はどれくらいでしたか?

庭野: 導入を決定してから1~2カ月で試験的に配信を開始することができました。2021年2月から実証実験を開始し、同年10月には本格導入に至っています。

LINEチラシ導入に際して苦労した点をお聞かせください。

庭野: 効果測定に関わる仕組み作りです。判断基準やメリットの見せ方など、社内に効果をアピールするうえで何を用いるべきなのか頭を悩ませました。ただ、こうした下準備に時間をかけたおかげで、実際の200店舗導入に際しては大きな抵抗を受けることなく進んだと感じています。

また、長期的に認知拡大を図るための施策設計も苦労したポイントです。LINEチラシを導入する大きな目的の一つは、チラシ閲覧者が「おくすりPASS FAST」の利便性に価値を感じ、薬局に処方箋を送信、ストレスなくお薬を受け取る体験をしていただくことです。しかし、このサービスをチラシで知ってもすぐに処方箋を送信し、お薬の予約をする閲覧者は少ないと想定していました。そこで、まずはユーザーの記憶にとどまる工夫をし、薬局を必要とする際に思い出してもらえるようにすべきだと考えています。

実際にLINEチラシを導入したあとの効果・反応についてお聞かせください。

LINEアプリ内で行われる処方箋送信の解説図

庭野: ユーザーの反応をリアルタイムに可視化できるようになったと感じています。
数値ベースの定量的な効果測定はこれからですが、自社のLINEチラシがいつ・どれだけ見られているのかが容易にわかり、紙のチラシでは得られにくい情報が可視化されています。今後はより詳細に効果を“見える化”し、さらなる施策につなげていけそうだと感じています。

また、現在展開しているプライベートブランド商品の買い物リスト(欲しい商品のブックマーク)などの機能が想定よりも使われていて、アクティブ率も当初の想像よりも高いと感じています。

サービスの登録者数も確実に増えてきています。「おくすりPASS FAST」 はWeb版とLINE版があるのですが、LINE版はリピート率がとても高いです。これはスマートフォンから処方箋を送信できることの手軽さと、LINEチラシのエリア親和性がマッチした結果ではないかと考えています。

「薬局だからこそ出せる情報」でコンテンツを拡充し差別化につなげる

LINE公式アカウントとの使い分けについてお聞かせください。

庭野: 使い分けというよりは、LINEチラシはLINE公式アカウントにつながるチャネルのひとつとして捉えています。おかげさまでLINE公式アカウントの友だち追加数は4万人を超える見込みです(2021年12月上旬)。今後はLINE公式アカウントから患者さま・お客さまにとって有益な情報を提供するなど、さまざまなマーケティング施策につなげていきたいと考えています。

LINEチラシ導入までの過程で反省点などがあればお聞かせください。

庭野: 実証実験の段階では、効果測定の方法を確立することが難しかったので、LINEチラシ経由の来局者の把握検証等をアナログな手法で進めてしまったことでしょうか。また、ほかのスーパーは商品があり、その次にチラシが来ているためバリエーションがあるわけですが、当社は単一のサービスをアピールするためにLINEチラシを使用していました。そのため、コンテンツの更新頻度や、内容が変化に乏しく単調だったかなと反省しています。

今後、LINEチラシを通して取り組んでいきたいことがあれば教えてください。

庭野: LINEチラシを見て来店していただけるように、店舗と連携しながら「来店したくなる仕組み」を作っていきたいと考えています。薬局だからこそ出せる情報を積極的に活用し、ほかの調剤薬局や、チラシを大量に配信している企業との差別化を意識していきたいですね。

単に「処方箋を渡して薬を受け取る場所」ではなく、新しい付加価値をアピールしたいと考えています。そのために、LINEチラシを活用しながらコンテンツの幅を広げて行く予定です。「この薬局、おもしろいことをしているな」と感じてもらえるように、チャレンジしていきたいですね。

今後、LINEチラシに期待することについてお聞かせください。

庭野: LINE社に対しては、十分な実績を持つ素晴らしい企業という認識を持っています。また、ヘルスケア業界全体を盛り上げるツールの一つとして、LINEチラシが持つポテンシャルにも期待しています。今後も、ユーザーさまから寄せられる要望をどんどん取り入れ、継続的に改善していってほしいですね。また、当社としては新規会員の発生を期待しているので、会員の獲得につながるような仕組みが強化されることを期待しています。

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ITベンチャー企業でのマーケティング業務や、キャスティング会社での新規事業立ち上げに従事した後、アイセイ薬局に入社。現在は、電子お薬手帳やおくすり予約サービスなど、デジタルマーケティング全般を主に担当している。

参考:
※1 株式会社アイセイ薬局 おくすり予約サービス「おくすりPASS FAST」
※2 厚生労働省 令和元年度衛生行政報告例の概況 薬事関係(PDF)
※3 一般社団法人 日本フランチャイズチェーン協会 コンビニエンスストア統計調査月報
※4 ※5 LINE株式会社 Business Guide(PDF)

※2021年12月時点の内容です。

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