株式会社トビラボ

サービス学会での共同研究成果発表

サービスデザイン・ラボ®では2020年から、演劇メソッドを保有する株式会社トビラボと共同研究を行っています。
その成果をサービス学会第11回国内大会にて発表しました。
研究テーマは「創造的なアイデアを生み出す際にどのような態度で臨むべきか?」です。
遊び心を持って物事に新たな意味を見いだすデザイン態度と、論理的分析的に物事をとらえるディシジョン態度。演劇メソッドも活用しながら短時間で二つの態度のマインドセットを行うワークを開発し、それぞれの態度がアイデアの発想や選定にどのような影響を与えるのかを検証しました。
(2023年3月時点の情報です)

概要

2023年3月8日~10日に京都大学で開催されたサービス学会第11回国内大会に、株式会社トビラボとの研究成果を論文として投稿し、採択されました。
「未来社会をデザインするサービス学」が学会テーマとして設定される中、「サービスデザインにおけるデザイン態度とディシジョン態度の役割」というタイトルで、研究成果発表を行いました。

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発表の様子

デザイン態度とディシジョン態度

デザイン態度は、デザイナー特有の態度といわれています。一般的なビジネスパーソンの態度(ディシジョン態度)とは異なり、「不確実性や曖昧性を積極的に受け入れる」といった特徴があります。

デザイン態度とディシジョン態度の要素

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研究目的

サービスデザインにおいて、デザイン態度とディシジョン態度が、創造的サービスの開発にどのような影響を与えるのかを明らかにすること。

プレ実験

デザイン態度の5つの要素は、役に共感し、想像力を膨らませて演じる演劇の基本的姿勢とも共通します。そこで特にデザイン態度のワークに演劇メソッドも活用し、デザイン態度とディシジョン態度の5つの要素それぞれを強化するワーク(計10ワーク)を開発。
学生に対して実際にワークを実施し、ワークの集約と内容の改善を行いました。

実証実験

学生68名を3グループに分け、デザイン態度を強化するワーク、ディシジョン態度を強化するワークをやるグループ、やらないグループで、アイデアの質や量を比較しました。

実験のプロセス

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デザイン態度を強化するワークとして以下の2つを実施しました。
1. 深い共感に従事するワーク
 主人公に共感をすることでモノの価値や見え方が変わることを体感する
2. 複雑性から新たな意味を創造するワーク
 ランダムな言葉から新しいストーリーを生み出す

デザイン態度を強化するワーク

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ディシジョン態度を強化するワークとして以下の2つを実施しました。
1. 複雑性を要素還元的に分析選択するワーク
 言葉の意味がつながるように並び替える
2. 認知(言語、数値)の力を用いるワーク
 データを重視し「正しく」事実を把握することの大切さを体感する

ディシジョン態度を強化するワーク

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ワークの影響を見るために実施したのがアイデアの発散と収束です。
アイデアの発散では、あるおばあさんの日常を映した動画を見て、気づきをリストアップした上で、「このおばあさんがとっても喜ぶサービスを考えてください」という課題を出しました。
収束段階では、自分が発想したアイデアを見比べ、ビジネスとして成功しそうなサービスのアイデアをひとつ選んで理由を記載するよう伝えました。

最終的に発散と収束の結果を評価し、グループごとの違いがあるかを分析しました。

<評価内容>
1. メインワークでの動画を視聴した際の違和感、驚きなどの気づきの数
2. 質の良いサービスアイデアの数(複数の気づきから発想している、気づきを深掘りして発想している)
3. アイデアの選択の基準が客観的か(他の選択肢との違い・市場規模・競合・実現可能性を考慮している)
4. 選ばれたアイデアが良いものか(2と3の項目を両方満たしている)

検証結果と今後

検証の結果、創造的なアイデアを生み出すためには、アイデアの発散、収束いずれの段階でもデザイン態度で臨むほうが良いという結論に至りました。
創造的なサービスを生み出していく際の態度変容に活用しやすい形に、今回開発したワークや研究成果をブラッシュアップしていきたいと思います。

共同研究先 株式会社トビラボ

演劇のメソッドを活用し、共感力・想像力・表現力を磨く研修プログラムを提供しています。現役の俳優など演劇の専門家がプログラム開発・講師を行い、青山学院大学ビジネススクールの教授が顧問を務めています。

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DNPではサービスデザイン・ラボという組織を編成し、人起点で商品やサービスの新たな体験価値を創造し、
それを継続的に提供するための組織や仕組みも含めてデザインする方法論「サービスデザイン」を推進しています。

※サービスデザイン・ラボは、DNP 大日本印刷の登録商標です。

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