学校法人滝学園様
私立高校における働き方改革の取組み
滝中学校・高等学校のテスト採点業務の改善から
私立高校において、教員の働き方改革の取組みとしてテスト採点・集計時間の削減×指導の質向上に取り組む学校法人滝学園の事例を紹介します。
この記事のポイント
- 従来のやり方に適合しやすい「採点支援」システムを選択
- デジタル採点により、従来比で1/2~1/3にテスト採点時間が効率化
- 「デジタル採点支援システム」の導入により、従来のテストを見直す意識改革にもつながった
「働き方改革」で業務改善が必須に
実業高校として設立、90年を超える歴史を誇る学校法人滝学園(愛知県江南市)では、2000年度から普通科のみの中高一貫校となり、地域・保護者から大学進学実績を求められるようになりました。その期待に対して必死で応える過程で、「とにかく『生徒のために』なるのであれば、と膨大な業務を抱えこみ、いつしか日付が変わっても職員室の電気が消えない状況になっていました」と語るのが、高校教務部の近藤 功明部長です。
生徒・保護者の笑顔や進学実績が、教員自身の励みや充実感につながっていた一方で、多大な業務量に疲弊する教員も少なくありませんでした。こうした中、全国的に教員の働き方改革が求められるようになってきました。生徒にとって教員は最も身近な社会人のひとりです。疲弊することなく、いきいきと働いている姿を見せることが必要でしょう。あまり知られていないことですが、私立学校には公立学校とは異なり、一般企業と同様の労働基準法が適用されます。つまり、1日に8時間、1週間に40時間以上の労働に対しては、原則125%の時間給の支払いが残業代として必要になります。しかし、学校というものは、いくら残業しても売上が上がるわけではなく、先生方の残業代が必要だからといって安易に授業料を値上げすることもできません。法律に則した働き方を目指す中、本校はクラブ活動などにおける外部委託を積極的に推進するほか、「今までのやり方をどこまで変えられるか」といった教員自体の業務改善を迫られることになりました。
「自動採点」ではなく、「採点支援」となるシステムを
そんな業務改善の1つとして検討されたのが、ICTを活用した採点業務の効率化です。教員はある意味、職人的な側面があるので、従来のやり方を変えることへの抵抗や批判が強いという傾向があります。必要だったのは、これまでのやり方になるべく適合しやすいシステムを選択することでした。「採点業務は教員が責任を持つ部分です。採点を機械任せにする『自動採点』ではなく、あくまで『採点支援』となるシステムを導入すること。しかも、PCやスキャナ(複合機)など新規購入の必要がないことにも注視しました」と振り返ります。
これらを踏まえて今年4月に導入したのが、日常のテストから入試まで紙のテストをスキャナで読み取ってPC上で採点できる「デジタル採点支援システム」になります。
本システムは「選択式問題」は自動採点し、「記述式問題」は一覧表示して串刺し採点できることが特長です。
採点時間が半減する教員も。教員のスキルアップにつなげたい
導入後の効果としては、多くの教員の採点時間が2分の1~3分の1ほど軽減されたことを挙げます。
しかし、教員の中にはICTに不慣れな教員もおり、「教員の『手作業』でのテスト採点こそが生徒との対話」といった信念を持つ教員も存在します。その理念には敬意を表した上で、「システムに任せられる部分は任せる。ただし、浮いた時間は生徒のためにつかう。具体的には教材研究や良問作成、生徒面談などにより時間をかけてほしいと考えています」と指摘。ICT導入は楽をするためではなく、「教員のスキルアップを図る」ための時間確保につながることを訴えていきたいと話しました。
従来のテストを見直す意識改革にも
一方、「デジタル採点支援システム」の導入によって、「従来のテストのままでよいのか」といった意識も芽生えてきたといいます。現場で行われている定期テストをみると、「単語の羅列」、「空欄補充」といった「選択式の穴埋め問題」が多く出題されています(図)。
「もちろん、ある程度の語句暗記は必要な力ですが、A.I.が普及していく次時代を生きる生徒に対して、必要以上の暗記をさせることがどれほどの意味があるのかは疑問です。それにも関わらず、このような問題が多く出題されている理由の1つとして、採点の負担があるのではないかと考えます。文章記述式の採点には膨大な労力と時間がかかるためです。一方で、長年このようなテストを作成してきてしまったがために、「空欄補充問題」しか作成できなくなっているなど、教員の作問能力が低下しているのではないか、という疑念も生じました。」と話します。
(図)
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「大学入試が変わろうとする中、このままでいいのかということになり、複合問題や思考力・読解力を問う問題を作ろうという動きが出てきました」と近藤部長。作問や記述採点に費やす時間を確保するためにも、システムの必要性が改めて認識されたと口にします。
今後の課題は、「本当に必要なテストとは何か」、「生徒にどんな力をつけさせたいのか」という問いかけ。あるいは「単にテストを実施した」という教員のアリバイ作りから脱却することといった具体例を挙げながら、「より一層、教員の意識改革を進めていきたいですね」と抱負を挙げました。
学校法人滝学園で成果を上げたデジタル採点支援システムが、DNPリアテンダントシリーズ「Answer Box Creator®」です。この事例以外にも、このシステムを活用してアンケート集計やテスト採点の作業改善が実現した、校務支援システムとの連携でさらに効率化が図れたとの声が全国から寄せられています。ぜひお問合せください。