奈良県奈良市教育委員会様
奈良市の「学びなら」事業は次のフェーズへ。
小学校での成果を踏まえ、「個別最適化学習」を中学校に展開、EdTechによる「指導と評価の一体化」を実現。
平成28年度のモデル校による実証から、現在全市立小学校4~6年生を対象に展開されている奈良市の取組み「学びなら」事業について、本事業で得られた小学校での成果を踏まえ、「個別最適化学習」の中学校への展開、EdTechによる「指導と評価の一体化」を実現する次のフェーズについて、取材しました。
本ページで紹介するリアテンダント®とAIドリル教材「Qubena」を活用した個別最適化学習の取組みについて、奈良テレビに取材を受けました。
この記事のポイント
- 中学校においての個別最適化学習を進めるべく、AIドリル教材「Qubena」を活用した実証を開始
- 本実証は、定期テストの結果に基づくアダプティブ学習であり、EdTechで「指導と評価の一体化」を実現する取組み
- 今後は、小-中学校間のスタディ・ログの共有で、よりきめ細かな指導につなげていく
エビデンスを活用して学習の定着を図る、「学びなら」の取組み
奈良市では、平成28年度のモデル校による実証から、現在全市立小学校4~6年生を対象に「学びなら」事業を展開しています。
「学びなら」は、単元テストの結果を分析し、児童一人一人の理解度や苦手分野に合わせた復習教材を紙で提供する、個別最適化学習の取組みです。
ICT(情報通信技術)と教育ビッグデータの活用により「指導と評価の一体化」を実現している国内でも先端的な事業であり、4年間で蓄積されたデータに基づく、教育効果に関する効果分析も進んでいます。
次フェーズとして、中学校での取組みを開始
このような状況を踏まえ、中学校においても個別最適化学習を進めるべく、奈良市では市立都祁中学校をモデル校として、実証を開始しました。
小学校の「学びなら」では、テストの結果に基づく個別復習教材を、紙の冊子で提供していますが、中学校の実証では、AIドリル教材「Qubena」を活用します。
従来通り紙で行った定期テストの結果を、小学校の「学びなら」でも活用している学習クラウド「リアテンダント」にて、各生徒の設問毎の正誤状況をIRT分析し、どの問題から優先的に復習させるべきかを抽出します。
「Qubena」はその抽出結果をもとに、類似する問題を自動出題します。
一般的にタブレット対応のAIドリル教材は、自学自習の場面での活用が中心ですが、今回の実証は、定期テストの結果に基づくアダプティブ学習であり、EdTechで「指導と評価の一体化」を実現する、国内でも例のない取組みです。
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実証研究を進める教員は、「テストの記述問題から生徒たちの解答ニュアンス(解答プロセスによる微妙な日本語使いや計算方法など)を見取ることに加え、特に苦手意識がある生徒に対しては、AIドリルにより基本的な知識・技能の定着を図ることができると感じています」と手応えを口にします。
加えて、実践した1年の生徒からも「解説が分かりやすいからうれしい」、「自分のスピードでできるからいい」、「家でもやりたい」、「ワークや問題集よりも、タブレットの方がいい」といった声が上がっていると指摘。
一人一人の学習状況を見取る教員の負担を軽減するとともに、そのぶんの時間を、本来目指すべき「主体的・対話的な学び」に向ける取組みとなっています。
小-中学校間のスタディ・ログの共有で、よりきめ細かい指導へ
実証のねらいについて、奈良市教育委員会奈良市教育センターの米田 力指導主事は次のように話します。
「中学校でも2021年度から学習指導要領が新しく変わり、より探究的な力が求められている中で、今の子ども達が変化の激しい時代を生きるためには、義務教育や高等教育の段階で知識を身に付けるだけでなく、身に付けた知識の活用方法を学ぶことが重要です。
これまでと変わらない授業時数と学習内容を踏まえ、さらに子ども達の『学び』を促進するためには、迅速な基礎学力を定着していくことが必要となってきます。
生徒一人一人の学習の定着度やつまずきは異なることから、中学校でも学習における個別最適化は必要であり、個々の苦手を早期に解決することで、学んだことを活用し、学習に取り組むことが求められています。
定量的な課題ではなく、個々の能力に応じた課題を課すことで、効率的に学習し、新時代に適応した子ども達の学びに取り組むことができる環境を作っていきたいと思います」
今後は「Qubena」で取り組んだドリルの結果と、定期テストの結果をクロス分析し、どの生徒がどのくらいドリルに取り組んだことで、テストの結果がどう向上したか、などを見える化する計画です。
また、同校の現1年生は小学校時代に「学びなら」の学習に取り組んでいることから、蓄積された小学校時代のデータを共有し、個々の生徒の見取りを深めることで、よりきめ細かな指導につなげていく予定です。
タブレット一人一台時代に向けて
文部科学省が主導する「GIGAスクール構想」で、今後一人一台の児童生徒端末の整備が加速されると、蓄積されたスタディ・ログをどう活用するかが、より一層重要になってきます。
米田指導主事も「児童生徒一人一台のタブレット環境が現実味を増す中で、本実証を通して得た知見をもとに、教科や学年の拡大について検証を進めていきたい」と近い将来を見据えます。
スタディ・ログに基づく個別最適化された学習をいち早く実践し、学力の向上や指導力強化につなげる奈良市の取組みは、全国の地方自治体からさらに大きく注目されることになるでしょう。
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